テレビは朝から晩まで、おしゃべりしているか、何か食べているか、そんな番組ばかりを放送している。日本はどこまでも平和で豊かな国だと錯覚するかのようである。しかし、自然災害は激甚化し、国際情勢は厳しくなるばかり。経済は浮揚せず、政治も混迷が続く。国民の生活が脅かされる中、何が大事で、何が必要なのか。公共の電波を使うテレビは、安易な視聴率稼ぎとは一線を画した番組の制作に力を入れるべきではないのか。
(岡部 隆明:元テレビ朝日人事部長)
ゴールデンタイムの番組で「爆食」を競う
今年8月、スーパーなど小売店でお米が品薄になる「米不足」が起きました。その後、新米の出荷に伴い徐々に解消されてきましたが、テレビのニュース番組で連日のように、空になったスーパーの棚を映していたのは記憶に新しいところです。
一方で、そうした「令和の米騒動」など、まるで関係ない別世界の出来事であるかのように、テレビでは連日、朝から晩までグルメの話題が満載でした。
典型だったのが8月19日の番組表です。新聞でテレビ欄を見るとゴールデンタイムに、こんな番組内容が隣り合って書かれていました。
…あんかけスパ味噌カツ総重量60キロを力士爆食…
…感動爆食甲州ワイン牛ステーキ絶品バーガー&かき氷…
2つの放送局がバラエティー番組で「爆食」をうたい、視聴率を競い合っていたのです。
ニュースでキャスターが神妙な顔をして「米不足」を伝えていたほか、ある報道番組では夏休み期間で給食がなく、十分に食べられない子どもが増えているという実態を特集していました。そんなテレビが、別の番組では爆食をお笑いのネタにして面白がる感覚は、やはりどこかずれているように感じます。