通訳である水原一平氏の違法賭博問題が発覚して以来、ドジャースの大谷翔平選手に関する報道がさらに過熱している。違法行為の疑いがかかる以上、この問題をメディアが報じるのは理解できるが、大谷選手についてはそもそも情緒的で過剰な報道が当たり前になっていなかっただろうか。テレビでも連日、大谷選手の素晴らしさを扇動的に伝え、これでもか、これでもかと多くの時間を割いている。
だが、その裏で、日本の内外で発生する問題が軽視されている可能性がある。特にテレビの報道関係者は、一人の人気者に依存している異常さに早く気づき、国民の知る権利に資するニュース番組に回帰すべきではないか。
(岡部 隆明:就職コンサルタント、元テレビ朝日人事部長)
大谷選手に関係するものは何でも放送
賭博問題の経緯についてはまだ不明な点があり、詳細は米国での捜査結果を待つしかありません。それでも直近の報道を見る限り、日本国内での大谷選手の人気は揺らいでいません。
問題発覚前のものですが、大谷選手が幅広く好かれていることがよくわかるアンケートの結果があります。
「新入社員が選ぶ理想の上司ランキング・男性部門」
(明治安田生命保険相互会社 2024年2月発表)
1位 内村光良
2位 大谷翔平
3位 ムロツヨシ
「理想の後輩ランキング・男性部門」
(ORICON NEWS 2023年3月実施)
1位 大谷翔平
2位 鈴木福
3位 山田裕貴
上司としても後輩としても理想像であるという人は、なかなかいないでしょう。私のようにスポーツに疎くても、大谷選手を応援している人は多いと思います。
それは、スポーツ選手としての超人的な能力だけでなく、会見などの受け答えに滲み出る人柄に魅了されるからなのではないでしょうか。先日の結婚発表の会見で、応じた理由を問われ、「みなさんがうるさいから」と記者団を牽制していたのは痛快でした。活字にしたら冷淡な言葉でも、大谷選手が笑みを浮かべながら言えばユーモアになります。
プレーをしている姿はもちろん、練習中に他の選手と戯れている時でも絵になります。こんなスーパースターをテレビが放っておくわけがありません。だから、ワイドショーもニュース番組も毎日、大谷選手の様子を追いかけています。そして、大谷選手に関係するものなら何でも放送するという姿勢です。