重厚だったNHKの地震特番

 その一つが、防災月間である9月に相次いで放送された大地震をテーマにした番組です。

 NHKはスペシャル番組『MEGA QUAKE 巨大地震』の2021年版(再放送)と、2024年の最新版を放送しました。いずれも期待以上に重厚な内容で心に刺さりました。

 2021年版は、東日本大震災から10年というタイミングで放送されたものです。その中で、震災発生前の2010年1月に放送した初回の番組で、東北地方でM(マグニチュード)8クラスの巨大地震が発生する可能性を伝えていたことを振り返りました。

 そして初回放送の1年後にM9.0の東日本大震災が発生し、地震学者など専門家たちが敗北感に打ちひしがれている様子を映し出していました。

 さらに、スーパーコンピューターで南海トラフ地震を再現し、「日向灘を震源とするM7.5の地震がきっかけとなり、南海トラフ地震が発生する」パターンがあるという研究成果を紹介していたのです。また、GPS観測装置で地殻変動を調べる学者は「北陸地方に『ひずみ』がたまっている状況だ」と指摘していました。これらは今年1月1日の能登地震と、8月8日の日向灘を震源とする地震を予見するような内容で示唆に富むものです。

 2024年の最新版では、首都直下地震に対して東京が抱える課題を浮き彫りにしていました。軟弱な地盤のところでは揺れが何倍にも増幅することがわかってきており、そうした軟弱地盤が最も広がっているのは東京を含む関東圏だというのです。

 東京の軟弱地盤で震度6強の地震が起きた場合、耐震設計された建物であっても、「杭基礎」の一部が破壊され「建物が傾斜するリスクがある」と警告していました。従来の常識に疑問を投げかけたのです。

 視聴者から徴収した「受信料」を基に、潤沢な予算と人員があるNHKだから制作できた番組でしょう(もちろん、科学をテーマにした番組のNHKの制作力は卓越していて、知見やノウハウが蓄積されています)。しかし、民放にも、良質の番組がありました。