(放送コラムニスト:高堀冬彦)
NHK連続テレビ小説『虎に翼』が佳境に入った。脚本家の吉田恵里香氏(36)は最後まで物語を小さくまとめず、観る側の熱狂は続いている。
視聴率もずっと高い。最終回までの数字は、『ちむどんどん』(2022年度上期)以降の5作品の中で最高となりそう。
どうして観る側を夢中にさせているのか。これまでの連続テレビ小説や民放の1時間ドラマとどこが違うのか。考えてみたい。
法曹たちも釘付けになった朝ドラ
まず、この作品はリーガルドラマである。法廷を描く作品は国内外を問わず人気がある。法廷内には悲喜こもごもの人間模様が凝縮されているからだ。
もっとも、法曹たちに聞くと、彼らは観ない。あまりにも事実と懸け離れている作品が多いためである。だが、『虎に翼』は例外だった。元最高裁判事の櫻井龍子氏(77)や日弁連会長の渕上玲子氏(70)ら大物法曹人たちも釘付けになっている。真実味があるからだ。プロの法曹も認めるのだから、一般の視聴者が面白くないはずがない。
クライマックスの「原爆裁判」も真に迫っていた。なにしろ主人公の佐田寅子(伊藤沙莉)ら3人の裁判官が下した判決は実際のものとほぼ同じ。「原爆投下は国際法からみて違法な戦闘行為」(判決の一部)。提訴は1955年で、判決が1963年に出たところも一緒だった。
このため、裁判が始まったのは98回で、判決が出たのは115回。長丁場となった。テンポを考えたら短縮するか集中させるだろうが、このドラマは真実味を重んじた。