トランプ政権との対決姿勢を鮮明にしたFRBのパウエル議長(写真:ロイター/アフロ)
(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
1月11日、FRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長は自身が刑事捜査を受けていると明らかにしたうえで、トランプ米大統領の圧力に屈しない意思を表明した。9日時点で、米司法省は刑事訴追の可能性を示唆する大陪審への召喚状をFRBに送付したという。具体的にはFRB本部ビルの改修工事にまつわる偽証罪などが念頭に置かれているそうだ。
こうした動きに抗議するパウエル議長の声明後、12日にはイエレン氏、バーナンキ氏、グリーンスパン氏などの歴代FRB議長経験者に加え、前財務長官であるガイトナー氏、ルー氏、ポールソン氏、そしてルービン氏までもが連名で批判的な書簡を公表した。
さらに、13日にはECB(欧州中央銀行)や英中銀のほか、フランス、スイス、カナダ、スウェーデン、デンマーク、オーストラリア、韓国、ブラジルの各国主要中銀、国際決済銀行などが連名でパウエル議長を支持する声明を公表している。
市場ではパウエル議長の不正が明らかになる可能性は低いとの見方が強く、3市場(株・債券・為替)の反応は今のところ鈍い。しかし、現職議長への政治圧力が放置された場合、もとより存在していた「FRBの独立性」への疑義はさらに可視化される。ドル安・米金利上昇が再び焚きつけられ、長期化させる材料になりかねないだろう。
利下げ期待が急速に強まることで米金利低下を着想する向きもあろうが、「ドル離れ」を触発する話題でもあり、最終的には「望まぬ金利上昇」につながる話と考えたい。
なお、上記の中銀声明に日銀の名前がない詳しい事情は分からないが、仮にトランプ政権への配慮を示した政治的意思だとすれば、昨年来議論している「一蓮托生リスクで円安」という動きはやはり妥当性を増す。
昨年の為替相場レビューに関しては、今月初めに公開した「5年目に突入した超円安局面、終止符を打つために最低限必要なのはリフレ思想の撤回と中立金利までの利上げ」でも展開しているので参考にしていただければ幸いである。