「ドル離れ」の再現か、早期撤回か
2025年4月以降、確認しているように、ドルという通貨の信認に疑義が生じ、「ドル離れ」が争点化した状況でも、為替市場ではドル安に応じた円高が持続することはなかった。むしろ「ドル安に連れて下がった」というのが実情であり、それ自体は経済・安全保障面での両国の結びつきを考慮すれば、必然の帰結でもあった。
ベネズエラ侵攻により孤立主義が前面に押し出された直後、今回の訴追が重なっており、ここから議長人事絡みでさらに地区連銀総裁などへの介入も露呈すれば、2025年4月以降の相場環境が再現されても不思議ではない(図表)。「ドル離れ」に伴う円安という一蓮托生リスクがまたも顔を出すのか。正攻法では捉えきれない値動きが生じる展開に構えたいところではある。

もっとも、ベッセント財務長官ですら今回のパウエル議長訴追に関し、トランプ大統領に対して「金融市場に悪影響を及ぼしかねない」と忠告した事実も報じられている。また、与党・共和党議員の中でも本件解決まではトランプ大統領の新議長人事案に反対すると表明する者が現れ始めているという。
理事残留に対する脅迫として刑事訴追という強硬手段に出たものの、さすがに「過ぎたるは猶及ばざるが如し」であり、早々に訴追撤回を迫られる可能性も十分考えられる事態と見受けられる。
※寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。また、2026年1日14日時点の分析です
2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中


