インドネシア、フィリピン、ベトナムは日本を選ぶ
──日本では若年層も保守化しています。
兼原:そうした中で、なかなか態度を変えられなかったのが立憲民主党でした。55年体制を続けてきた左派政党です。野田代表は中道のほうに引っ張りたいけれど、古い人たちが動かない。だから起死回生を図って公明党と一緒になりました。
今はまだ目新しいから「中道」という掛け声で盛り上がるけれど、自治労、日教組、創価学会がまとまれるのか私は疑問です。原発や集団的自衛権をめぐる議論をこのメンバーで話し合えるでしょうか。ソフトクリームみたいに、一時期は形を作っているけれど、やがてドロドロに溶けてしまうかもしれない。
高市総理は安倍総理が舵をきった新路線通りに動いています。トランプ大統領支持者は、アメリカも疲れてきたからもう外国の面倒をみたくないと言っていますが、インド太平洋圏の経済は拡大していて、もうすぐ大西洋圏を抜きます。
その中で「自由主義のリーダーの一人として米国を支えられるのは日本しかいない」と考えたのが安倍総理でした。こうした姿勢は内外で好意的に受け止められており、トランプ大統領の応援もありました。
東南アジア諸国連合(ASEAN)の中では、タイやミャンマーは中国寄りですが、島嶼部のインドネシアやフィリピン、歴史的に中国に苦汁を嘗めさせられてきたベトナムは、中国と日本のどちらにつくかと言われたら日本を選ぶでしょう。
戦後、欧米諸国と異なり、対等な目線でのパートナーシップを大切にし、政府開発援助(ODA)や自由貿易を通して、彼らの発展に貢献してきました。そうして信頼関係を築いてきたからです。
トランプ政権は自由貿易に批判的ですが、アメリカが抜けた後、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)をまとめたのは日本でした。日EU経済連携協定も作りました。どちらも安倍政権の時です。今、両者の連携の話が進んでいます。結構、重要なところでリーダーシップも見せているのです。
──自由貿易協定を通して対中のまとまりを形成しているのですね。
兼原:世界経済の発展には自由貿易が必要ですし、それがなければグローバルサウスは寄ってきません。政府開発援助(ODA)だけではダメです。
一国が経済的に立ち上がっていく最初の段階ではODAは意味がありますが、経済が離陸した後に必要になるのは投資です。先進国が、技術と資金を途上国に振り向けて、工場を作り、作った製品を買ってあげる。だから世界経済全体が成長する。
ただし、その一方で、軍事力のある大国間の関係が落ち着いており、国際関係全体が安定していないと、こうした経済の話も吹っ飛んでしまいます。経済は、安全保障という花壇があって初めて大輪の花をつけます。