経済と安全保障がまだつながっていない
兼原:日本のGDPの50%を軍事にあてても中国には追いつかないという現実を、まず理解しなければなりません。国民の福祉に30兆円使っています。科学技術や公共事業も取り込んで、賢く幅広い防衛関連予算の作り方を考えるときです。安全保障関連予算と呼んだ方がいいかもしれません。
米国の科学研究開発費はおよそ20兆円です。このうち10兆円がペンタゴンに行き、残りが大学や企業に行きます。それで「ゲームチェンジになるようなすごいことをやってほしい」と言われる。そういうところからすごい技術が生まれる。日本はそういう努力を全くしてきませんでした。
最近ようやく経産省が経済安全保障という観点で補助金をつけていかなければならないと考えるようになりました。TSMCの熊本誘致と北海道のラピダスは経産省の産業政策局が初めて安保に踏み込んだ成果です。でも、まだそこで頭が止まっている。日本のデュアルユース技術で自衛隊をどう強くしていくかなど、軍事に直結した話はこれからですよね。
ラピダスは、誰が製品を買うのかが問題で、「少し高くても純国産だから絶対大丈夫」と言うならば、政府が補助金を出して、自衛隊の装備用にするべきです。本当の安全保障の議論と経産省の議論がまだつながっていません。
防衛費は海外から武器を買わないかぎりは全部国内に落ちます。軍事に予算を使うことは鉄板の経済対策でもあるのです。自衛隊が通れない橋や護衛艦が入れない港などもありますから、修繕してどこでも出動できるようにしなければならない。工事費や科学技術費など、広い意味で防衛の予算を組み直さないといけません。
──具体的にはどのように進めたらいいのですか?
兼原:新規立法すればいいのです。岸田総理が始めた経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)というものがあります。2年間で5000億円積んで、アカデミアに予算をつけました。左傾化した学術会議はすごく反発しましたが、日本の安全保障のために研究をする先生たちが少しずつ出始めています。
安全保障関連技術推進基本法を作り、総理官邸(内閣官房)の指示の下で、内閣府、防衛省、経産省、総務省などが一緒になって、企業の研究室に研究を委託して、安全保障関係の技術を研究してもらうことです。
内閣府の中に総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)というシステムがあり、そこに年間4兆円の予算をつけています。そのお金が大学の研究を支える国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と企業の研究開発を支える新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に落ちている。これが科学技術の予算配分の仕組みです。そこに5000憶円を加えたのが岸田政権のK Programです。
同じような仕組みを産業界のデュアルユース技術のために作らないといけません。元警察官僚の北村滋さんが国家安全保障局(NSS)の局長をされていましたが、これが非常に良い人選でした。経産省だとどうしても財界に気兼ねしてしまいます。財界は中国を意識して、中国に嫌われるようなことは嫌がる。北村さんが外事警察のドンだからできたことです。
北村さんの存在があったから形になったのが経済安全保障法制であり、K Programです。今度は、産業界用のKProgramを立ち上げる必要があります。10兆円の基金を作って運用し、その利回り分を毎年、安保関連研究資金として優れたデュアルユース技術を持っている企業に振り向けたらいい。研究開発のみならず、製品化、市場化のためのスタートアップに支援が必要です。
──核武装についてもお考えを教えてください。