参院予算委員会で答弁する国光文乃・外務副大臣(写真:つのだよしお/アフロ)
(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)
外務副大臣による2度の事実誤認発言
国光あやの外務副大臣が、ネット番組「ReHacQ(リハック)」における自身の発言をめぐり、事実誤認を認めて謝罪・撤回した。さらに自身のX(旧Twitter)アカウントを削除するに至った。
2025年12月6日の番組配信時(現在、番組は配信が中止されている)、国光氏は立憲民主党の小西洋之参議院議員の質問通告に「小西先生から、10分しか(質疑の)持ち時間がないのに、50問ぐらい聞かれて、ほんとに死にました。私、子育てできませんでした。それで辞めた女性官僚はたくさんいます」等と発言した。
この発言は、事実無根であるとして当の小西氏から厳重な抗議を受けることになった。12月15日、国光氏は発言を撤回して小西氏に直接謝罪した。
16日には木原稔官房長官から厳重注意を受けた。さらに17日には、国光氏のXアカウントが突如として削除された。
なお当該番組には、筆者も出演していた。具体的な質問者について重ねて尋ねたのは筆者である。その意味で反省しなければならないのは、そもそも発言のおかしさにその場で気づけなかったことである。
「10分の持ち時間に50問聞かれた」のが事実だとすれば、1分で5問回答することになり、とても現実的ではない。後日、小西議員とやはり同番組でご一緒したときに指摘をうけ、確かにその通りだと感じた。
筆者も「面白さ」に流され過ぎていた。「面白さ」と「批判的な眼差し」の両立は難しいが、改めて意識したい。
◎【ReHacQ生配信】立憲民主党小西ひろゆき議員【高橋弘樹】 @YouTubeより
国光氏は2025年11月7日にも高市早苗首相が衆院予算委員会の答弁準備のため午前3時から勉強会を開いたことに関連して、「午前3時に高市総理の出勤が必要なのは、そもそも『(特に野党の)質問通告が遅い』からです。前々日の正午までという通告ルール、どれほどの野党議員が守ってますか?」という内容をXに投稿していた。
しかし、質問通告のルールは2014年に「速やかな質問通告に努める」と改定されており、国光氏の主張は事実と異なるものであった。この投稿もまた撤回・謝罪に追い込まれ、木原官房長官から注意を受けている。
◎質問通告期限「前々日正午」と事実誤認 木原長官、国光外務副大臣を注意 SNS投稿巡り @Sankei_newsより
わずか1か月余りの間に、同一の副大臣が二度にわたって事実誤認に基づく発言や投稿を行った。その都度、官房長官から注意や厳重注意を受けるという事態は確かに異例と言わざるを得ない。
むろん霞が関における質問通告の量や時間、それに伴う官僚の負担は、国会運営の透明化という観点から議論されるべきテーマである。近年、霞が関の働き方改革への関心も高まっている。予算委員会など注目度の高い場面では、想定問答の作成準備が深夜に及ぶこともあり、官僚の働き方改革との関連で課題となっていることは確かだ。
しかし、それを特定の個人、野党議員に対する攻撃と見なされるような発言をし、具体的な「離職」という深刻な事実に結びつけるのであれば、厳密なデータや客観的な証拠が不可欠であることは論をまたないし、退職理由という秘匿性の高い情報を、伝聞や曖昧な記憶に基づいて公の場で語ったのだとすれば、外務副大臣という立場にある者としては軽率に過ぎたというほかないのではないか。