小泉セツ
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(鷹橋忍:ライター)

NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第10週「トオリ、スガリ。」では、主人公・松野トキに想いを寄せた、下川恭平が演じる小谷春夫が、存在感を放った。この小谷春夫というキャラクターを作るにあたり、一部参考にしたとされるのが、大谷正信(大谷繞石[じょうせき])である。大谷正信とはどのような人物で、松野トキのモデルの小泉セツや、トミー・バストウが演じるレフカダ・ヘブンのモデルであるラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と、どのように関わっていくのだろうか。

抜群の英語力

 大谷正信は明治8年(1875)3月22日に、島根県松江市で酒造業を営む大谷善之助と、彼の妻・タルの長男として生まれた。

 嘉永3年(1850)生まれのラフカディオ・ハーンより25歳、慶応4年(1868)生まれの小泉セツより7歳年下となる。

 大谷正信の随筆集『己がこと人のこと』には、「可なり裕福な家に育った」と記されており、5歳年下の弟・喜雄とともに、恵まれた少年時代を送っている。

 明治20年(1887)には、島根県尋常中学校に入学。

 生まれながらに聡明な大谷正信は、常に学級では首席の座にあった。

 特に英語は、吉沢亮が演じる錦織友一のモデルとされる西田千太郎らの教えを受けたこともあり、飛び抜けた力を持っていたという。