ハーンから破門同然にされた理由

 大谷正信はハーンの晩年に、ハーンから厭われ、破門同然となったという。

 その理由として、大谷正信が東京で買った紙布を「松江土産」と偽って小泉家に持参したことや、ハーンは「紳士ぶった才子型」や「えらそうに見せかける人間」などのタイプの人間を嫌っていたが、大谷正信がそんなタイプの人間だったことが挙げられている。

 加えて、ハーンは彼より18歳も年下の妻・小泉セツが、「同郷出身で年齢も近く、美男子の大谷正信に誘惑されるのではないか」という嫉妬もあったのではないかと、考えられている(梶谷泰之著、内田融監修、村松真吾編注『へるん百話—小泉八雲先生こぼれ話集』)。

 しかし、ハーンの没後、大谷正信は第一書房から出版される『小泉八雲全集』の翻訳に心血を注ぐなど、一貫して、恩師ハーンの文業の普及に尽力し、大いに貢献していることからみて、強い師弟愛が存続していたことが証明されたと考えられている(池野誠『小泉八雲と松江 異色の文人に関する一論考』)。

 ドラマの小谷春夫とレフカダ・ヘブンの間にも、これからもっと深い絆が生まれるのだろうか。