ロシアに向かったインドの養殖エビ

 欧州では頭打ちになりつつあるが、米国だけでなく、ロシアのエビ需要もますます高まっている。2025年のロシアのエビ輸入量は前年比2パーセント増加したが、ロシアでは獲れないバナメイエビ、ブラックタイガー、アルゼンチンアカエビなどが中心だ。スシ用の生食アルゼンチンアカエビの需要増は止められない。

 輸入先は、インド(1.9万トン)、中国(0.9万トン)、ベトナム(0.8万トン)、サウジアラビア(0.7万トン)、インドネシア(0.2万トン)などとなっており、インドからの輸入が前年比6パーセント増だったが、中国からの輸入が3割増と大幅に伸びた。中国船が獲ったアルゼンチンアカエビを買っているからだ。

 インドの養殖エビが米国からロシアへ向かったことは確かだ。2022年のウクライナ戦争開始直後、ロシアはインドに原油を売ったはいいが買う物がない状態だったものの、現在はカニカマやエビの輸入、そして傭兵を増やしている。

 ロシアにおけるエビの輸入価格は上昇したが、冷凍エビの売り上げは金額ベースで前年比15パーセント増となった。戦時ケインズ主義で好景気を保っており、輸入は堅調だ。

 一方、北極海・バレンツ海のノーザンシュリンプの漁獲量は2.6万トンと減少し、輸出量は0.6万トンと20パーセントも落ち込んだ。ノーザンシュリンプを買っているのは中国、日本、カザフスタンで、ロシアの漁業は衰退しており、また日本は中国に買い負けるようになってきた。

 米国はグリーンランド領有をぶち上げて強い批判を浴びた。ただ、ノーザンシュリンプだけでなく、カラスガレイ(えんがわ)や甘えびなど北極の海産物を確保するという点から見ると、日本が米国とともにグリーンランドを領有するというのも、海産物輸入の面から見ると、あながち妄想とは言えないかもしれない。

安木新一郎(やすき・しんいちろう)
函館大学商学部教授、択捉島水産会理事
専門:ロシア経済、貨幣史
略歴:昭和52(1977)年兵庫県生まれ。大阪市立大学大学院経済学研究科後期博士課程単位取得満期退学。経済学修士。外務省在ウラジオストク日本国総領事館専門調査員などを経て、2023年より現職。
著書:『ロシア極東ビジネス事情』(東洋書店、2009年)。『貨幣が語るジョチ・ウルス』(清風堂書店、2023年)など多数。