ロシア企業の投機が増えているブルガリア(写真:CavanImages/イメージマート)ロシア企業の投機が増えているブルガリア(写真:CavanImages/イメージマート)

 中東欧の小国ブルガリアで、ロシア系企業が急増している。ロシアによる直接投資が増えているわけではないのに、ロシア系企業が増えているのはなぜだろうか。(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 欧州連合(EU)の政策サイトであるユーラクティブ(Euractiv)が伝えたところによると、中東欧の小国ブルガリアで、ロシア系企業が急増しているようだ。ブルガリアの商業登記簿に基づくと、同国には2024年9月時点でロシアの資本が参加する企業が1万2000社存在しており、年末までにさらに1000社増加した模様とのことである。

Bulgaria sees sharp rise in companies with Russian participation(Euractiv)

 この1万3000社のうち、7300社以上が100%ロシア資本の企業であり、残りの5700社はロシアの個人ないしは法人、投資家が40%以上出資している企業であるようだ。一方で、資本参加が40%未満の企業に関するデータは存在しないようなので、そうした企業を加えると、ブルガリアに存在するロシア系企業はもっと多いと考えられる。

 ロシアは2022年2月のウクライナ侵攻以降、ブルガリアを敵対国と認定している。同国が加盟するEUがロシアと対立しているためだが、ブルガリアはロシアに対して厳しい措置を行っておらず、国内のロシア資産を凍結することもしていない。ゆえに、ロシア系企業にとってブルガリアは、チェコと並ぶ格好の登記先となっている。

 ブルガリアを代表するロシア資本の企業として、ロシア最大の石油会社であるルクオイル傘下の精製子会社、ルクオイル・ネフトヒム・ブルガス(LNB)がある。

 LNBはバルカン半島で最大の製油所であり、もともとは良好なロシアとブルカリアの関係を象徴する企業である。しかし、今ブルガリアで増えているロシア系企業は、こうした大企業ではない。

 実際に、ロシアの対ブルガリア直接投資の動きを確認すると、2023年には名目GDP(国内総生産)の0.17%の流入があったが、24年には0.02%の流出に転じている。つまり、ロシア系企業はブルガリアの実体経済に影響を与えるような大型の投資を行っているわけではない。冒頭で述べたように、ロシア系企業が増えているのは、あくまで登記だ。

【図表1 ロシアの対ブルガリア直接投資】

(注)24年は1-9月期の数字 (出所)ブルガリア国立銀(注)24年は1-9月期の数字 (出所)ブルガリア国立銀