なぜロシア系企業の登記が増えているのか?
実体経済面では、ブルガリアはむしろウクライナとの関係を深めている(図表2)。2022年、ブルガリアによるウクライナ向け輸出は名目GDPの1.3%と前年(0.6%)から倍増し、ロシア向け輸出(0.6%)を抜いた。以降、ウクライナ向け輸出は2023年が0.9%、2024年が0.6%と減少しているが、ロシア向け輸出は上回っている。
【図表2 ブルガリアによる対ロ・対ウ輸出入の動向】

ロシアとウクライナが交戦状態に入ったことで、ブルガリアの軍需産業が潤ったのは有名なエピソードだ。旧ソ連型の砲弾を利用していたウクライナ軍は、それを生産できるブルガリアの軍需企業(例えばアーセナル社)から調達していたためだ。とはいえ、こうした流れは2023年で一服しており、2024年にかけて減少している模様である。
他方でブルガリアのロシアからの輸入は、2022年には名目GDPの7%まで膨らんだが、その後は急減し、2024年は1.4%だ。EUによる経済制裁の一環でロシア産の化石燃料の輸入を削減していることがこの動きに現れている。ただ、トルコを経由したロシアからの輸入もあるため、実際はロシアとの結びつきはもっと強いのだろう。
それに対して、ウクライナからの輸入は2023年、2024年は1.1%と、ロシアからの輸入を下回っている。
いずれにせよ、貿易統計を確認する限り、ブルガリアは実体経済面で、ロシアとの関係を深めているとは言えない。こうしたことも、ロシア系企業の登記が増えているからと言って、ロシアとブルガリアの関係が緊密化しているという判断が早計である理由だ。
ロシア系企業はブルガリアのみならず、チェコでも登記を増やしているようだ。ではなぜ、ロシア系企業は両国で登記を増やしているのか。