中国の輸入統計にイラン原油が出てこないカラクリとは
パナマ船籍の船は2024年8月にイラン国営会社のタンカーから60万バレル以上のイラン原油を受け取った。香港船籍の船はイスラム革命防衛隊(IRGC)に代わって1億ドル以上のイラン原油を中国に輸送したという。
イランがどれくらいの原油を生産し、輸出しているか、正確な数字はつかめない。それでも石油輸出国機構(OPEC)統計などから推計すると、2022年まで日量100万バレルを下回っていた輸出量が23年夏には一時200万バレルを超え、昨年も160万バレル前後で推移したとみられる。
原油市場では「イランが輸出する原油の9割近くは中国に向かう」との見方が多い。ところが、中国の輸入統計にイラン原油はほとんど現れない。東南アジアのどこかで積み替え、「別な国の原油」となって中国の港に入る。そんな偽装工作が浮かび上がる。OFACはイラン側からの積み替えとともに海事文書の偽造などの証拠を示した。
対ロシアで米財務省は1月、エネルギー収入を削減する主要7カ国(G7)の公約を果たすために石油生産者2社の操業停止、前例のない数の石油輸送船、不透明な石油取引業者などを標的にした制裁強化も発表した。
米財務省はロシアが「闇の船団」への依存を強めている実態を指摘。「闇の船団」の一部である石油タンカーと、ロシアを拠点とする船団運営者が所有する183隻を制裁の対象にした。
対象になった船舶のうち数隻は、ロシア産石油だけでなく、制裁対象のイラン産石油も運搬していたと断定した。
ロシアが22年にウクライナを侵略して以降、米国を中心にした先進各国はロシア産の石油の販売に上限価格を設け、船舶保険や銀行決済網からロシアを排除することで収入を抑え込もうとした。
しかし、ロシアはこうした包囲網を回避し、欧州の代わりに中国、インドなどへ原油と石油製品を輸出した。
