封鎖が解除されても残るコスト上乗せ
なお、本稿執筆時点では原油価格の騰勢を抑制する動きも見られており、実際、70ドル強までの上昇にとどまっている。
3月1日、緊急で開催されたOPECプラスの協議では、供給制約を緩和する目的から従来の1.5倍にあたる日量20.6万バレルを増産する方針で合意している。米国でもシェールオイルが高水準で生産されている事実に鑑みれば、原油の物理的な在庫が急に枯渇するわけではない。
また、イランにとって最大の原油輸出先である中国もホルムズ海峡を航行する原油に依存しているため、封鎖の長期継続はイランにとっても政治・外交・経済面でダメージを伴う措置ではある。
話を政治・外交・経済の視点に戻すと、中国や自国へのダメージに鑑みれば、今回の措置が短期終息するのではないかとの思惑は確かにある。しかし、ハメネイ氏殺害後のイランにおいてそうした合理的な思惑が機能しているのか。海峡付近の港湾施設などは破壊されていないのか。不透明な部分は枚挙に暇がなく、必ずしも短期終息を当然視はできない。
1つ言えそうなことは、地政学リスク上の大きなリスクと言われつつ、実際は考えにくいと言われていたホルムズ海峡封鎖が(形はどうあれ)現実化した以上、あらゆる経済主体は「今後も起こり得る」という前提で行動せざるを得ないだろう。
それは海峡利用にあたって、従前よりも時間とコストのかかる世界を意味しており、当然、原油価格にもそのコストが上乗せされてくると考えるのが自然だ。
中国の政治的な介入も念頭に置けば封鎖の長期化自体は可能性の低いのかもしれないが、実際に封鎖の意思が解消されたとしても、物流が正常化され、エネルギー価格の正常化に至るまでには相応の時間がかかると見ておきたい