和食文化に欠かせない「昆布」、不漁の原因は?和食文化に欠かせない「昆布」、不漁の原因は?

山田 稔:ジャーナリスト)

 8月に北海道を訪れた。太平洋沿岸の街にある魚介類が豊富に揃うスーパーで毎年、手ごろな価格で毛ガニや地場の魚を購入して北の幸を楽しんでいる。ところが、今年は勝手が違った。

 毛ガニは店頭になく、代わりに棚に並んでいたのは近年大漁が続くオオズワイガニ。2杯で500円程度と格安だ。毛ガニはすっかり獲れなくなってしまったという。サケも相変わらず不漁で揚がるのはブリばかりだ。ウニやイカもすっかり数が減り、値段は高騰する一方だ。

 そんな北海道で今年、昆布漁が中止に追い込まれたというニュースが流れた。和食文化に欠かせない昆布の世界に何が起きているのか。北の海の異変を追う。

北海道各地で厳しい状況に追い込まれている昆布の生育環境

 オホーツク海沿岸にある雄武町(おうむちょう)。特産品は海産物。利尻昆布の生産地としても知られ、雄武産利尻昆布は平成24年から道内でもっとも支持されているコンビニ「セイコーマート」のおにぎりにも使用されている。

 そんな昆布の特産地にこの夏、衝撃が走った。雄武漁協が今季のコンブ漁の中止に追い込まれたのだ。資源量不足が原因だ。昨年の猛暑で生育が悪かったうえ、冬季の流氷に覆われた期間が長かったことで、流氷の氷塊で根を切られた昆布が多かったという。漁の中止は戦後初めてのことだ。

利尻昆布の生産地がピンチに利尻昆布の生産地がピンチに

 雄武漁協の昆布は天然もので、2023年度の昆布の水揚げは84トン、1億800万円だった。2020年131トン、2021年107トン、2022年51トンと例年100トンは維持してきたが、ここ数年、海水温の上昇と流氷の影響で生産量が落ち込んできた。そこへもってきてついに漁中止に追い込まれてしまったわけだ。

 資源回復には2年ほどかかるとされているが、「細目昆布が育ってきているので、そちらに期待したい」と漁協の担当者は希望を口にする。

 今年は釧路管内でも5月末に棹前昆布(さおまえこぶ)漁が中止に追い込まれたばかり。こちらは高水温による生育不良が原因だ。昆布の生息環境が北海道各地で厳しい状況に追い込まれているようだ。