日本のEEZ内に他国が設置したブイはすぐさま撤去すべきだ(写真は中国が設置したものとは別)

 中国は、南シナ海で岩礁を埋め立て人工島にして自国領に組み入れようとしている。

 あまり気付かれないように少しずつ埋め立て地を拡大し、クレームを受けると近傍を通過する船舶の「航行の安全」を図るためと主張して国際社会の反論を封じた。

 その後、飛行場を造成していることが判明すると民間航空機の発着で「軍用ではない」と主張。

 そしていつしか国家権力の象徴である戦闘機や対空ミサイルまで配備し自国領にしてしまう。

 少しずつ手段や方法を強化し、主張を変えながら自国が目指す目的に向かっていくやり方は「サラミ戦術」と呼ばれている。

 中国は尖閣諸島でもサラミ戦術を取っている。日本は主権行為としてブイの撤去を早急に行うべきではないだろうか。

高度化・複合化するサラミ戦術

 東シナ海に資源があることが分かると、尖閣諸島を含む周辺を海洋法で自国領に組み入れた。

 その後は未確定の日中中間線周辺の資源開発に関する合意を無視して開発を一方的に続けている。

 その後は尖閣諸島の日本のEEZ(排他的経済水域)や領海への侵入である。公船の侵入範囲や頻度・隻数、また滞在時間や日数の増減などで自国領を誇示してきた。

 しかし、これらは日本の領土である尖閣諸島周辺に常在する「もの」ではなかった。

 目的のためには手段を選ばないのが中国である。2023年後半に設置したのが常在する海上ブイである。

 従来の方法とは明らかに意味を異にしている。

 公船の侵入で陰に陽に自国領であると主張してきたが、ブイは常在的かつ明示的に中国の「存在」、すなわち自国領であることを顕示し始めたのだ。

 中国は超限戦という戦略を採用している。

 兵器・装備に加えてウサデン(宇宙・サイバー・電磁波)による戦いばかりでなく、政治や経済をはじめ、宣伝戦や三戦とも呼ばれて来た世論戦・心理戦・法律戦、さらには近年強調される誤情報を積極的に流して認知を誤った方向に導き判断を誤らせる認知戦など、あらゆるものを複合させて迫ってくる。

 福島第一原子力発電所の事故で発生した処理水を「核汚染水」と呼び世界に向けて発信し続け、日本の水産物を輸入禁止にした。

 日本が道徳的に許されないことをしているかのように国際社会に向かって誤情報を流し続けた。

 漁業関係者には経済的損失を与え、また心理的な葛藤に追い込み、日本の政治と経済に混乱をもたらした。

 認知戦の最たるものであり、いまだに継続している。

 ブイの設置は、日本を混乱させる新たな方法、法律戦・心理戦の展開である。日本政府は半年以上も国際法をめぐって逡巡し対応行動が取れないままである。

 日本の逡巡は中国の思う壺ではないだろうか。

 日本が撤去云々について国際法上の問題を検討しているうちに時間が過ぎ、いつしか常在的に確認できる「もの」を配備したという既成事実を作り始めたのである。

 サラミ戦術に認知戦や法律戦などが加味され高度化・複合化してサラミ戦略に昇華したといっていいのかもしれない。