12月1日に約200の締約国・地域が参加してドバイ(UAE:アラブ首長国連邦)で始まったCOP28(国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議)は期間を1日延長して13日に閉幕した。

 今日の主要なエネルギー源である化石燃料が温室効果ガス排出の元凶とみなされている。

 そこで「脱化石燃料」は理想であるが産油・産炭・産ガス国には繁栄をもたらしている資源であるだけに「一気」の廃止はいうまでもなく、「段階的」は廃止さえ打ち出せなかった。

 結局、「2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにするため化石燃料からの脱却を加速させる」ことに落ち着き、中間目標として2035年までに2019年比で60%削減を掲げる合意にとどまった。

 しかし、一方で化石燃料に代わるエネルギー源の必要性を強く意識させる会議ともなった。

原発と核融合発電に初言及

 問題は代替エネルギーを何にするかに行き着く。

 再生可能エネルギーは2030年までに3倍にすることになったが気象や日照時間に影響され稼働が不安定である。そこで安定的なエネルギー源として登場したのが原子力である。

 COP28は近年の急激な気候変動を受けて議論の新しい展開をもたらした。

 化石燃料の「抑制」が初めて文書に明記された一方、「原子力発電(原発)」が登場したことである。

 原発については「脱炭素化を進める手段の一つ」と控えめな表現ではあるが、日米仏加など22の有志国は「2050年までに原電3倍化」の決意を表明した。

 原発についての決意表明は核アレルギーの強い日本において原発再稼働の推進に役立ち、また廃炉技術の輸出や廃炉作業の受注に寄与すると見られる。

 原発が脱炭素社会へのベース・エネルギーと意識されつつあるとはいえ、放射能汚染などのイメージが付き纏っている点から世界の共感を得るまでには至っていない。

 脱炭素化を進める「手段の一つ」との表現からも全幅の信頼を得るに至っていないことが分かる。

 では何が望ましく、近未来において実現の可能性があるのか。

 最終的かつ恒久的なエネルギー源と考えられているのは核融合発電である。

 これは太陽のエネルギー生成原理であり、放射能ともほとんど無関係である。この核融合発電についても今回初めて言及があった。

 米国のジョン・ケリー大統領特使(気候変動問題担当)が12月5日の会議で、「核融合は私たちの世界に革命を起こす可能性がある」と語り、「35か国で研究開発やサプライチェーンの課題、規制、安全性に焦点を当てる」と述べたのである。

 この発言に先立つ約1か月前の11月8日、米国と英国は「核融合に関する協力協定」に調印している。