昆布不漁の原因は異常気象だけではなかった!

 北海道の昆布生産は国内の9割以上を占めている。昆布が生育する海の中では「昆布の森」が形成され、多彩な魚介類が生息。さらに昆布は大気から海水に溶けた二酸化炭素を吸収して、光合成反応によって有機炭素化合物を生成する。つまり昆布はブルーカーボンの貴重な供給源となっているのだ。

 その昆布資源が急激に痛めつけられ、生産量が激減している。最盛期の1976年には3万4000トン近くあったのが、2022年は1万1106トンにまで落ち込んだ。生産額はバブル期の1989年には386億円に達していたが、2022年は179億円と半分以下の水準だ。今年は生産量が1万トンを切るのではないかとささやかれているほどだ。

 昆布とひと口で言っても種類はさまざま。真昆布(函館)、日高昆布、厚葉昆布(道東)、長昆布(道東)、羅臼昆布など地域によって種類に違いがあり、それぞれの味わい、特徴がある。

 江戸時代、北前船で大阪に運ばれたのは主に真昆布。主要産地は函館市郊外の南茅部。映画「海猫」の舞台になった漁港でもある。

 同地の天然真昆布は「白口浜真昆布」として知られる一方、江戸時代には松前藩が朝廷や将軍家に献上したことから「献上昆布」とも呼ばれ、漁協組合員の約9割が生産に従事しているという。天然ものは抜群の味と香りが高い評価を受け、高級料理店では出汁、塩吹き昆布、高級佃煮、昆布締めなどに使われ重宝されている。

 南かやべ漁業協同組合によると、令和4年の天然真昆布の生産量は19トン、令和5年は23トンで、最後の豊漁だった時(平成26年)の703トンの3%ほどでしかない。養殖物の生産量は2453トン(令和4年)だが、平成25年の3000トン超に比べると減少傾向にある。

「いろんな取り組みをしているが、自然が相手なだけになかなか資源を回復するのは難しい」(漁協関係者)という状況が続いている。

 真昆布に限らず昆布不漁の原因はいくつか指摘されている。

・異常気象による海水温の上昇で発育不良
・ウニによる食害や石灰藻が石を覆うことによる磯焼け
・若者人口の流出や重労働を嫌っての生産者の大幅減少

 昆布漁は異常気象による生産量低下と生産者減少という二重苦にあえぎ、戦後最大の危機的状況に陥っている。