(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)
AI半導体の勝者と敗者
2022年11月30日に米OpenAIがChatGPTを公開してから2年が経過した。この2年間で、さまざまな生成AIが開発され、世の中はAIブーム一色になった。
生成AIは、AI半導体を搭載したサーバー上で動作する。そのAI半導体を巡って多くの半導体メーカーが競争繰り広げているが、勝者と敗者が明確になっている(図1)。
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まず、設計においては、AI半導体の世界シェア約80~90%を独占する設計専門のファブレス、米エヌビディア(NVIDIA)一強となり、プロセッサメーカーの米インテル(Intel)や米AMDは苦戦を強いられている。
次に、エヌビディアのGPU(Graphics Processing Unit)などのAI半導体の製造においては、ウエハにチップをつくり込む前工程も、チップを切り出してパッケージングする後工程も、全て行っているファウンドリーの世界最大手、台湾TSMCが、これまた市場を独占している。
さらに、エヌビディアのGPUなどのAI半導体には、DRAMを縦に積層した広帯域メモリ(High Bandwidth Memory、HBM)を多数搭載するが、この分野では、DRAMの世界シェア1位の韓国サムスン(Samsung)ではなく、同シェア2位の韓国SKハイニックス(SK hynix)が先端HBMの市場を独占している。
要するに、AI半導体を巡る競争の第1ラウンドにおいては、エヌビディア、TSMC、SKハイニックスが勝者となった。以下では、その詳細を論じたい。