AI半導体に使われるCoWoSパッケージ
半導体は、チップの設計、チップをシリコンウエハ上に作り込む前工程、チップをウエハから切り出してパッケージする後工程の3段階で作られている。
ここで、AI半導体については、ファブレスのエヌビディアやAMDが設計を行い、本来なら前工程だけを行うファウンドリーのTSMCが、後工程も行っている。そして、エヌビディアのGPUなどのAI半導体は、「CoWoS(Chip-on-Wafer-on-Substrate)」というパッケージで作られる(図5)。
図6を使って、このCoWoSをさらに詳しく説明する。まず、シリコンウエハから切り出した角型のインターポーザの上に、GPU、CPU、およびDRAMを積層したHBMなどが設置される。この段階が、「CoW(Chip-on-Wafer)」である。
次に、各種チップが配置されたシリコンインターポーザを、パッケージ基板(Substrate)に接合する。この段階が「WoS(Wafer-on-Substrate)」である。
以上から、図6のようなパッケージを、CoWoS(Chip-on-Wafer-on-Substrate)と呼ぶようになった。それでは、CoWoSおよびCoWoSに類似するパッケージについて、どこが、どれだけの製造能力を有しているのか。
企業別のCoWoSの製造能力
図7に、2023年から2025年にかけての企業別のCoWoSおよびCoWoSに類似するパッケージの製造能力を示す。単位は、1年間あたりシリコンウエハ換算で1000枚(K枚)とした。
2025年の予測値で比較すると、TSMCが690Kウエハ/年、後工程専門の半導体メーカーOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)のASEが80Kウエハ/年(同業のOSATのSPILを傘下に持つ)、同じくOSATのAmkorが67.2Kウエハ/年となっている。
一方、CoWoSと全く同じではないが、CoWoSに類似するパッケージをインテルもサムスンも開発している。ところが、2025年の製造能力は、インテルが10Kウエハ/年、サムスンが1Kウエハ/年しかない。要するに、CoWoSに類似するパッケージについて、インテルもサムスンもまるで競争力がない。
それに対してTSMCは、CoWoSの製造能力で、2023年に79.1%、2024年に77.6%、2025年に81.3%のシェアを持つ。つまり、エヌビディアのGPUをはじめとするAI半導体のほとんどが、TSMCのCoWoSパッケージで作られているわけだ。冒頭で、AI半導体でTSMCが勝者となっていると述べたのは、このような事情による。
それでは、最後に、エヌビディアのGPUなどのAI半導体に必要不可欠な広帯域メモリ(HBM)について見てみよう。