(資料写真、キオクシア本社で撮影、2021年9月30日、写真:ロイター/アフロ)

(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)

キオクシア上場のニュース

 9月2日付の日本経済新聞によれば、四日市工場や北上工場で、米ウエスタンデジタル(WD)と共同でNANDフラッシュメモリを生産しているキオクシアホールディングス(KIOXIA Holdings、本社:東京都港区)が、東京証券取引所(東証)に新規株式公開(IPO)を申請したという。

 その記事には、「(キオクシアは)2024年1~3月期に最終損益が6四半期ぶりに黒字に転換し、4~6月期の純利益は1~3月期の7倍に拡大した。データセンター向けの製品が好調で、22年秋から続いた減産を24年6月に解除した。25年秋には岩手県北上市の工場の新棟を稼働させる」と書かれており、IPOの背景にはキオクシアの好調な業績があるようだ。

 しかし筆者は、どうもこのニュースを全面的に信用することができない。というのは、キオクシアは過去に何度も上場すると発表しては見送り、WDと統合すると言っては断念するというようなことが続いていたからだ。

 したがって、今回のキオクシアのIPOについても、果たして東証が承認するのか? そして本当に上場するのか? と疑問を持っている。その上、たとえ上場したとしても、筆者は、キオクシアの将来に明るい展望を描くことができない。というのは、半導体メモリは規模がモノをいうビジネスであるが、キオクシアは韓国メーカーに売上高(シェア)で大きな差をつけられているからだ。

 本稿では、まず、キオクシアのこれまでの業績、何回も検討したけれど空振りに終わったIPOおよびWDとの統合について振り返る。その上で、キオクシアがいくら業績好調と言っても、その売上高(シェア)がサムスン電子(Samsung Electronics)やSKハイニックス(SK hynix)などの韓国メーカーの足元にも及ばない現状を述べる。加えて、技術でも劣勢を強いられている。

 そのため、現状では、2~3年サイクルでやって来る半導体不況にキオクシアが直面した場合、再び苦境に陥るであろうという見解を論じたい。