そして、AI半導体ブームは、NANDにも影響を及ぼし始めた。AIサーバーの動作には、今まで以上に高密度なNANDが大量に必要になってきたためだ。このチャンスを手中に収めようとして、これまで3次元NANDの積層数で後手に回っていたサムスン電子が大攻勢を仕掛けつつある(図7)。

図7 3次元NANDの積層数でサムスン電子がぶっちぎりのトップへ

 サムスン電子は今年2024年に290層を量産し始めた。来年2025年は、3XX層をスキップして、一気に430層の量産を計画している。さらに2026年には570層の量産を視野に入れている。つまり、サムスン電子は、売上高(シェア)でも、3次元NANDの積層数でも、ぶっちぎりのトップに躍り出ようとしている。

キオクシアの未来はどうなる?

 トップを快走し始めたサムスン電子に対してキオクシアはどうなのか?

 売上高(シェア)では、サムスン電子の背中が遠のくばかりであり、とうとうSKグループにも抜かれてしまった。WDと統合しても、サムスン電子にはまったく追いつかない。その上、3次元NANDの積層数でも、他社に大きく後れを取っている。

 つまり、キオクシアとWDは、売上高規模でも、3次元化の積層数でも、競合他社に大きな差をつけられてしまった。筆者は、ここからキオクシアが巻き返してサムスン電子に追いつけるとは、到底思えない。それどころか、2~3年で好不況を繰り返すシリコンサイクルの底、つまり不況がやってきたら、キオクシアはまたしても苦境に陥るのではないか?

 筆者は、今のままではキオクシアに明るい未来を描くことができない。そのため、キオクシアが生き残るためには、大株主のSKハイニックスの傘下に入ったらいいのではないかと思う。