そのため、NANDでは、2016年以降に、2次元の微細化を諦め、メモリセルを縦に積む3次元化に移行した。その結果、NANDメーカーは、高密度メモリを作るために、縦に何段積むかという競争をすることになった。

 その3次元化で、キオクシアは劣勢を強いられている。

3次元NANDの各社のロードマップ

 図6に、NANDメーカー各社のロードマップを示す。2021年にマイクロンが176層(Layer)の3次元NANDを量産し始めて、積層数でトップに躍り出た。それにSKハイニックスが追随し、さらにサムスン電子も半年遅れで176層を生産し始めた。

図6 NANDメーカー各社の3次元NANDのロードマップ(2021~2024年)
出所:Ken Kuo(TrendForce)、「全世界メモリ市場分析から来年AI未来の予測」(TreendForce産業フォーカス情報、2023年12月14日)のスライド
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 そのような中で、またしてもマイクロンが2023年に232層の量産を開始して、韓国メーカーの先に出た。SKハイニックスとサムスン電子は半年遅れでマイクロンに続いた。

 ところが、マイクロンと韓国メーカーが200層以上の3次元NANDを量産しているにもかかわらず、キオクシアとWDは112層より先に進むことができなくなっている。前掲図1に示したように、2022~2023年にキオクシアが赤字に転落していたため、開発投資や設備投資ができなかったことがその要因の一つである。

 図6のロードマップでは、キオクシアは2023年に162層をつくることになっているが、これはスキップした模様である。しかし、218層が量産できる見通しも立っていないようだ。

サムスン電子がぶっちぎりのトップへ

 このように、3次元NANDの積層数の競争で、マイクロンが抜け出し、韓国メーカーがそれを追いかける、ということが続いていた。

 この状況のもと、2022年11月30日に、米OpenAI社が「ChatGPT」を公開し、世界中に生成AIブームが訪れた。生成AIは、NVIDIAのGPUなどのAI半導体を搭載したサーバー上で動作する。そのため、NVIDIAのGPUが引っ張りだこになった。

 NVIDIAのGPUには、DRAMを8~12チップ積層した広帯域メモリHBM(High Bandwidth Memory)が多数搭載される。これにより、サムスン電子、SKハイニックス、マイクロンのDRAMメーカーは、しのぎを削ってHBMの生産を加速している。