このように、キオクシアは、これまで4回もIPOの準備をしたり申請したりしている。WDとの統合(買収)の話も2回あった。しかし過去のIPOや統合は、全て見送りとなった。だから、今回のキオクシアによるIPOも、今後何かが起きて取り消しになるかもしれない。もはや、筆者は、キオクシアが「オオカミ少年」に思えてならないのである。

キオクシアの業績は本当に「良い」のか?

 キオクシアが上場するかどうかは分からない。しかしその前に、上場する根拠として、半導体市況が好転し、キオクシアの業績が好調になったことが背景にあるが、本当にキオクシアの業績は上場を申請するほど「良い」のだろうか?

 図2は、NANDの企業別の売上高を示している。全てのNANDメーカーが、2023年中旬以降に売上高を増大させている。その中でも、サムスン電子およびインテル(Intel)の中国大連工場を買収したSKハイニックス(SKグループ)の売上高が急増させている。キオクシアも売上高が増大してはいるが、韓国メーカー2社に比べると、回復状況も2024年第2四半期(Q2)の売上高規模も大きく見劣りする。

図2 企業別NANDの四半期の売上高(~2024年Q2)
出所:TrendForceのデータを基に筆者作成
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 図3は、NANDの企業別売上高シェアのグラフである。2008~2010年頃は、キオクシアはサムスン電子とトップシェアを争っていた。ところが、2011年以降、キオクシアのシェアは急速に減少し、次第にサムスン電子との差が開いていった。さらに、2022~2023年以降、キオクシアもWDも、より売上高シェアが下がっている。

図3 企業別NANDの四半期の売上シェア(~2024年Q2)
出所:TrendForceのデータを基に筆者作成
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 2024年Q2時点で各社のシェアは、1位のサムスン電子が36.9%、2位のSKグループが22.1%、3位がキオクシアの13.9%、4位が米マイクロン・テクノロジー(Micron Technology)の11.8%、5位がWDの10.5%、6位が中国YMTCの4.2%となっている。