ベトナム・ハノイの夜景(資料写真、出所:PIxabay)

(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)

 ロジック半導体の微細化が40nm(ナノメートル)付近で止まってしまった日本は、世界最先端の微細化を独走している台湾のTSMCを熊本に誘致して、第1工場で28nmと16nm、第2工場で7nmと40nmを生産することになった。

 TSMC熊本工場はウエハ上にチップをつくり込む前工程を専門に行うファウンドリー(半導体受託生産会社)であるから、この工場に生産委託する設計専門の半導体メーカーであるファブレスの存在が欠かせない。また、ウエハ上にチップができたら、それを切り出してパッケージングし、検査する後工程メーカーのOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)も必要である。

 ところが、日本にはファブレスが10社もない(5社程度ではないか?)。また、後工程のOSATも、ほぼない。ただし、最近、OSATの売上高ランキングで世界1位の台湾ASEが北九州に進出するかもしれないという報道がある。もっとも、実現するかどうかは分からない(図1)。

図1 半導体の製造工程と日本の状況
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 もしかしたら日本政府は、TSMCを熊本に誘致したことにより、「これで日本のロジック半導体は大丈夫」とでも思っているのだろうか? だとしたらそれは大間違いである。ファブレスとOSATの強化が必要不可欠であり、今のままでは極めてバランスが悪いとしか言いようがない。

 では、米国や中国などの他国はどのような状況にあるのだろうか? また、バランスが悪い日本の状況を解消するには、どの国をお手本にすればいいのだろうか?