オランダ北ブラバント州フェルトホーフェンに本社を構える半導体製造装置メーカーASML

(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)

米国の対中輸出規制と日蘭の協調

 2022年10月7日、米国が中国の先端半導体メーカーに対して、半導体製造装置の輸出を停止する規制を発表した(その規制を「10・7」規制と呼ぶ)。その後、日本とオランダも、米国に足並みを揃えることになり、日本は2023年7月1日以降、オランダは2023年9月1日以降、ArF液浸露光装置を出荷しないことになった。

……はずなのだが、2024年第2四半期(Q2)に至るまで、オランダのASMLが依然として、中国にArF液浸を大量に出荷している。一体これはどうしたことなのだろうか? 本稿では、その詳細について分析し、今後を展望する。

中国がArF液浸を買い漁っている

 まず、図1に示したASMLの露光装置別の出荷額を見てみると、ArF液浸の出荷額が、最先端露光装置EUVを抜いて、2023年Q2に2.8億ユーロ、同年Q3に2.6億ユーロとなった。

 このとき、図2に示したASMLの地域別の出荷額を見ると、同年Q3に、中国向けが2.4億ユーロとなり、過去最高の出荷額を記録している。

ともにASML決算報告書のデータを基に筆者作成
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