キオクシアの四半期の業績とIPOなどの経緯

 図1に、キオクシアの業績、IPOやWDとの統合の動きを示す。

図1 キオクシアの四半期の業績とIPOやWDとの統合の動き
出所:キオクシアの決算報告書を基に筆者作成
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 イソップの寓話には、羊飼いの少年が「オオカミが来たぞ」と嘘をついて大騒ぎをする話がある。最初は大人たちが武器を持って駆けつけるが、徒労に終わる。そのため、本当にオオカミが来た時、少年が「オオカミが来たぞ」と言っても誰も助けに来ず、少年の羊はオオカミに食べられてしまったというお話だ。

 改めて図1を見ると、キオクシアのIPOやWDとの統合は、まさに「オオカミ少年」の寓話を髣髴とさせる。一体、キオクシアは何度「IPOをする」と言って世間を騒がせたのか?

① 2017年に東芝からメモリ事業が切り出され、2019年10月1日に東芝メモリ(現キオクシア)が創立された。その直後に、2019年度内に上場する準備をしていることが報じられたが、半導体市況が悪化し、上場申請は見送りとなった。

② 2020年にコロナの感染が世界に広がるとともに、リモートワークなどに必要な半導体の需要が喚起され、半導体市況が好転した。それに伴ってキオクシアは上場を申請し、東証が承認した。にもかかわらず、米中の半導体摩擦が深刻化したことなどから、キオクシアは上場をやめた。

③ 2021年に入ると、キオクシアは赤字に陥り、WDによる統合の話が水面下で進められた。これは実質的にWDによるキオクシアの買収だったと思われる。しかし、両者が条件で折り合いをつけることができず、この話は消滅した。

④ 上記と並行してキオクシアは、2021年夏に上場の準備を進めていたが、この申請は見送られた。

⑤ 2022年から2023年にかけてコロナ特需が終焉し、史上最悪クラスの半導体不況が到来し、キオクシアは深刻な赤字に陥った。一時は債務超過に陥るレベルまで財政は悪化し、キオクシア単独での存続は困難となり、再びWDとの統合話が持ち上がった。ところが、キオクシアに間接出資している大株主のSKハイニックスが反対したため、この統合は成立しなかった。

⑥ そして本稿の冒頭で示したように、市況が回復し、黒字浮上したこともあって、2024年9月2日にキオクシアが上場を申請した。