先端HBMをSKハイニックスが独占

 2024年3月20日のブルームバーグ(Bloomberg)の報道によれば、HBMの市場シェアは、SKハイニックスが54%、サムスンが41%、米マイクロン・テクノロジー(Micron Technology)が5%であるという。しかし、このシェアの値は実態を表しているとは言い難い。

 その理由を、図8を使って説明する。2016年頃から開発が始まったHBMは、世代を重ねるごとに、DRAMの積層数を増大させてきた。その積層数は、HBM1では4層、HBM2とHBM2Eでは8槽、生成AI時代を迎えたときに必要となったHBM3とHBM3Eでは12層になった。さらに、次世代のHBM4では16層になると予測されている。

図8 DRAMの積層数が増えていく広帯域メモリ(HBM)のロードマップ
出所:トレンドフォース(TrendForce)、https://www.trendforce.com/news/2024/09/04/news-sk-hynix-startups-might-abandon-hbm-in-ai-chip-design-but-not-high-performance-computing-products/
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 そして、HBM3以降では、SKハイニックスが市場をほぼ独占している。加えて、マイクロンはエヌビディアの認定を得ることに成功しているが、サムスンは認定を得られていない。

 つまり、現時点では、技術も市場シェアも、SKハイニックスが大きくリードしている。その上、先端のHBM不足を解消するために、エヌビディア、TSMC、そしてSKハイニックスの3社が共同開発を行っている。メモリメーカーが製造したHBMは、そのほとんどがTSMCに送られて、CoWoSパッケージに組み込まれる。そのTSMCと共同開発することになったSKハイニックスは、より有利な立場に立ったといえるだろう。

 HBMを含むすべてのDRAMの売上高シェアを見ても、SKハイニックスの躍進ぶりがうかがえる(図9)。2022年Q4に23.1%だったSKハイニックスのシェアは、その後急増し、直近の2024年Q3には34.4%となった。首位のサムスンはシェアを低下させており(41.1%)、SKハイニックスとの差は6.7%となった。このままいくと、いずれ、SKハイニックスがサムスンを抜いてしまうかもしれない。

図9 企業別DRAMの売上高シェア(~2024年Q3)
出所:トレンドフォースのデータを基に筆者作成
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