(朝比奈 一郎:青山社中筆頭代表・CEO)
政治的激動~2カ月の振り返り
この2カ月ちょっとの間、永田町は激動しました。
9月27日に行われた自民党総裁選で石破茂氏が新総裁に選出され、10月1日に国会で首班指名を受けて総理大臣に就任。その石破首相は総裁選の余勢を駆って、総裁選時の示唆(有権者が判断できるだけの間を置いてから解散)とは逆に、電撃的に10月9日に衆議院を解散。10月27日の総選挙に突っ走りましたが、リスクを取っての決断もむなしく、自民党はあえなく大敗を喫してしまいました。
30年ぶりの少数(過半数割れ)与党となった自公政権ですが、その間、国会で物事を動かせるようにするため、国民民主党の取り込みに邁進し、いわゆる103万円の壁の撤廃(水準は決まっていませんが、課税最低限となる収入水準のある程度の引き上げ)をコミットしています。譲歩を重ねつつ、何とか政権の維持に努めています。
裏を返して言えば、わずか約20議席(正確には21議席)を増やした国民民主党がキャスティングボートを握り、50議席を増やした立憲民主党を抑えて存在感を増しています。特に党代表の玉木雄一郎氏の前々からのインターネット系への露出強化(YouTubeやSNSの頻繁な活用)が、ここにきて大いに効果を発揮したとみられており、特にネットを良く見る若い世代向けに、103万円の壁の撤廃は響いたと見られています(*学生などが、アルバイト等で年間収入103万円を超えてしまうと、世帯控除の対象外となってしまうため、親との相談で、働き控えが起きてしまうので。本来、103万円の壁は、所得税がかかりはじめるというだけであり、個人単位で見れば、この収入を超えても、収入そのものが減るわけではない。社会保険料負担が発生することで手取りが減ってしまう130万円の壁の方がインパクトは大きいはずだが、ネットなどを良く見ている世代向けには、より早く到達する「103万円」の方が響くともいえる)。
この間、兵庫県知事選で、県会議員全員一致で不信任を突き付けられ、既存メディアがこぞってそのパワハラぶりなどを報道していた斎藤元彦知事が、ネットでの存在感の大きいNHKから国民を守る党の立花孝志氏の異例とも言える応援を受けて、それまでの常識で考えると奇跡とも言える再選を果たしました。
また、名古屋市長選でも、既存政党(自公や立憲・国民)が満を持して送り出した国民民主党の国会議員だった大塚耕平氏を抑えて、河村たかし前市長の後継者であり、ネット上での存在感の大きい日本保守党が推す広沢一郎氏が圧勝しました。
先述のとおり、国政選挙における国民民主党の勝利も併せて考えると、さらには、少し前の都知事選での石丸候補の善戦なども見ても、わが国にもネット世界の選挙への影響が物凄く大きい時代が到来したと言われはじめています。
今後、徐々に世代交代が進み、既存メディア以上に、ネットに溢れる情報に影響を受ける世代が、選挙における存在感を増していくことは間違いなく、その意味では、日本の政治に地殻変動が起き始めていることは間違いのないところでしょう。
しかし、武力革命で相手を物理的に滅ぼすということでもない限り、こうした変化は一定の時間をかけて徐々に進むものです。一晩で、ゲームの根本が変わるものではありません。