中国に対するトランプ氏の攻め方

久保:まず圧倒的に関税で攻めていくでしょう。ただ、トランプ氏自身は軍事的に中国を威圧する姿勢は見せていません。最近、「中国が台湾に侵攻したらどうしますか?」と問われたトランプ氏は「中国に200%の関税をかける」と答えました。

 従来の米国の大統領であれば、そのような場合に、ジョージ・W・ブッシュ氏やバイデン氏のように台湾を守ると明言したり、少なくともほのめかしたりするものですが、トランプ氏はそうした発言はしない。関税を使えば、ほとんどの外交問題は処理できると考えているのかもしれません。問題の核心は、それを中国がどう解釈するかということになります。

──台湾有事の可能性が高まるという意味でしょうか?

久保:そこは中国の解釈次第です。トランプ氏は「民主主義国だから台湾を守る必要がある」という発言をしたことがないのではないでしょうか。一方で、「台湾は米国から半導体産業を奪っていった国」といった批判的な発言をしたことがあります。

 これに対して、国務長官に指名されたルビオ氏は元来、軍事力を用いてでも台湾を守る必要があるというネオコン的な考えの持ち主です。ルビオ氏とトランプ氏がどのようなケミストリーで方向性を決めていくのかは未知数で、実に興味深いところです。

──トランプ氏が各国に貿易戦争を仕掛けていくと、結果的に米国が孤立し、その他の国々が貿易やビジネスの面でつながり、むしろ中国のほうにまとまりができてしまうのではないでしょうか。

久保:あり得るシナリオだと思います。中国が今日本に対してやや優しい態度を見せているのも、各国と連携して米国の恣意的な関税に反対する国家連合を作っていこうという動きのようにも見えます。反トランプ連合という形で、中国を支持する国が増えていく可能性はあります。

 同盟国であっても、そのこと自体を条件反射的に肯定的に捉え、特別扱いしないのがトランプ氏の発想の特徴かもしれません。逆に「米国に防衛で依存しておきながら、防衛で自助努力を十分せず、米国に対して貿易黒字を出そうとしている国」という見方をされると、これまでとは相当に異なる扱いを受ける可能性があります。

──ウクライナ戦争や、イスラエルを中心とした中東情勢に、トランプ氏がいかに介入していくのか、注目が集まっています。