トランプ側近が語った和平プラン

久保:トランプ氏は選挙期間中に「大統領になれば1日でウクライナ戦争を終わらせてみせる」と語りました。早期にこの戦争を終結させることに強い意欲を持っていることは間違いありません。

 問題は、どうやって停戦に持ち込むのかということです。トランプ氏は以前からプーチン大統領に相当な敬意を表明してきました。そして、バイデン政権下でウクライナに提供されてきた武器や財政支援に対して、批判的な発言を繰り返してきました。

 最近、トランプ氏の側近がメディアに語った和平プランによれば、現在ロシアが支配しているウクライナの地域をウクライナに放棄させる形で停戦を進めたい。応じない場合は米国からの支援を減らしていく、といった内容です。これはかなりロシア寄りの和平案です。

 問題は、何よりもウクライナがどれくらいまだ戦う意欲を持ち続けるかでしょう。次いで重要なのが、ロシアに強い脅威を感じている英国、フランス、バルト諸国、北欧諸国などがどの程度、今後も引き続きウクライナを支えるかです。これらの国々が強い姿勢を見せれば、ウクライナは戦い続けるかもしれません。

 中東情勢に関して、トランプ氏はイスラエル寄りの姿勢を鮮明にしていくと思います。ただ、第1次トランプ政権を思い起こすと、アラブ首長国連邦(UAE)などいくつかのアラブ諸国とイスラエルの国交回復の仲介をしています。トランプ政権が、中東でネガティブなことだけをしてきたわけではありません。

 共和党の支持基盤を考えても、イスラエルを支持しておけば、トランプ氏の地位は安泰です。これに対して、民主党のほうが単純なイスラエル支持とはいかなくなってきていて、分裂しています。左派系や若者を中心に、パレスチナ寄りの考えを持っている人が多数いるので、バイデン大統領もハリス副大統領も、党内をまとめることができなかったと思います。

 トランプ氏は、パレスチナに対してはバイデン政権以上に冷たい態度を取る可能性が高い。次期イスラエル大使に、マイク・ハッカビーという福音派の牧師が指名されましたが、宗教的な信念も加わって、イスラエル支持の傾向がとても強い人です。この人事もトランプ氏によるイスラエル支持の強い意思表示です。