- コロナ禍でいったんは減少した外国人人口だが、再び増加に転じている。人口推計の月次ベースでは300万人の大台が迫っている。
- 一方、日本の15歳以上人口は本格的に減少局面に突入しており、労働力人口も2019年をピークに減少局面に転じたとみられる。
- 人手不足を和らげるためには外国人材の受け入れを拡大する必要があるが、主な供給元であるアジア諸国も少子高齢化が進んでおり、外国人材の受け入れのために賃上げ圧力が強まる可能性がある。
(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)
【外国人統計】
<主に3種類ある>
将来の人口動態は、出生、死亡、国際人口移動の3変数により規定される。少子化の深刻化により、先行き人口減少や人手不足が予想される中、日本経済は外国人への依存度を高めつつある。本稿では、外国人人口の近年の動向を振り返り、先行きのポイントを整理する。
外国人の人口変動を考える上では、どの統計を見るかが問題になる。
日本国内の外国人の人口規模を示す統計は、①人口推計の外国人人口、②住民基本台帳の外国人住民、③在留外国人統計の在留外国人数(旧登録外国人統計の外国人登録者数)と主に3種類ある。
近年の動向を見ると、3統計とも概ね連動しているものの、絶対数に差がある。
2022年初の規模を比較すると、①外国人人口は267.0万人、②外国人住民は270.4万人、③在留外国人数は276.1万人である。なお、③のみ2021年12月31日時点であり、①②よりも1日早いデータだ。
<3統計の違い>
直近こそ3統計の差は縮まっているが、従来から②③に比べて①の人口規模が小さい状態が続いている。3統計ともに、3カ月以上の滞在者(もしくは滞在予定者)を対象とし、定義が近い。
具体的には、①は国内滞在期間が3カ月を超える外国人を、②③は特別永住者や中長期在留者を対象とする。
中長期在留者とは、日本に在留資格を有して在留する外国人のうち、3カ月以下の在留期間が決定された者や短期滞在・外交・公用の在留資格が決定された者以外の者等のことで、入管法の規定に基づき在留カードを交付された者のことを示す。
定義が近いにもかかわらず、②③よりも①の規模が小さくなる理由は、一時的な出国者を含むか否かにあるとみられる。
①は日本国内に実際に滞在している者が対象であり、出国した者は対象とならない。一方、②③では、日本への再入国の予定があって一時的に国外へ出国する場合、在留資格や住民票は残り、在留外国人や外国人住民としてカウントされる。
例えば、出国して1年以内に日本へ再入国し、かつ元の住所へ戻る予定の場合、自治体への転出届は不要となる。コロナ禍後、各種制限で外国人が一時的な出国を控える動きが広がった結果、統計上で①と②③の差が縮まったと考えられる。
次に、長期の時系列を確認できる人口推計で外国人人口の動向を振り返ってみよう。