子ども未来戦略方針を発表した岸田首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
  • 岸田政権は少子化対策の拡充として、子育て世代の給付増を掲げている。
  • だが、出生率の減少に寄与しているのは婚姻件数の減少である。
  • 子育て世代の支援とは別に、婚姻件数の増加につながるような施策が必要だ。

(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)

 将来の人口動態は、出生、死亡、国際人口移動の3変数により規定されるが、コロナ禍後にいずれも大きく変動している。

 国際人口移動については、5月31日の拙稿「間もなく300万人突破の外国人人口、増加基調の中長期的な継続には対策不可避」で取り上げた。本稿では、出生数の動向を確認し、少子化加速の背景を整理する。

間もなく300万人突破の外国人人口、増加基調の中長期的な継続には対策不可避

【出生数の推移】
<出生数は50年前の4割弱>

 日本では長らく少子化が問題となっており、コロナ禍後に一段と深刻化している。具体的にはどういう状況であろうか。まずは、過去約半世紀の出生数の動向を振り返ってみる(図表①)。


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 出生数は、ちょうど50年前の1973年に209.2万人のピークを記録した。一般に、この前後の1971~74年(度)生まれの世代は「団塊ジュニア」と呼ばれる。当時、「団塊の世代」を中心として婚姻件数が年100万件を突破し、比例的に出生数が膨らんで200万人を超える状態が続いた。

 その後、出生数は長らく減少基調にある。

 直近2022年のデータを見ると、出生数は77.1万人であり、ピークの1973年対比で4割弱(37%)へ縮小している。この約50年間、家庭当たりの子どもの人数が減った影響もあるが、それ以上に婚姻件数が減少した影響が大きい。

 家庭当たりの子どもの人数の参考指標として、婚姻当たり出生数を試算すると、1973年は1.95人であったが、2022年には1.53人へ減った(図表②)。約50年間で8割弱(78%)の縮小だ。

 対して、婚姻件数は1973年に107.2万件であったが、2022年には50.5万件へと大きく減少した。約50年間で半分弱(47%)へ縮小している。


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