「表現の自由」で議論を巻き起こしたあいちトリエンナーレ2019(写真:YONHAP NEWS/アフロ)
  • 共産党埼玉県議会所属の女性県議3人が、県が管理するプールでの水着撮影会にクレームを申し立て、盛大に燃え上がっている。
  • ただ、今回の中止申し入れの法的根拠は不適切で、行政権力の暴走、見ようによっては憲法問題になりかねないレベルの問題である。
  • 水着の女性も群がる男性カメラマンはキモいが、それは私の主観に過ぎず、私がどう思おうと、誰かの権利を侵害しない限り、表現の自由は守られるべきもの。

(山本一郎:投資家、作家)

「共産党は関係ありません」

 勢いよく埼玉県の共産党所属女性県議3人が、プールでの水着撮影会に対するクレームを申し立てているツイートが拡散されておりました。

日本共産党埼玉県議会議員団のツイート

 実際、デイリー新潮で、ライターの徳重龍徳さんが埼玉県の公園を管理する公益財団法人「埼玉県公園緑地協会」事務局長や共産党埼玉県連に問い合わせた内容も踏まえてみる限り、行政法としては明らかに違法な行政指導であって、埼玉県の公営プールなどでの水着撮影会を一律中止要請というのは比例原則違反となるのは言うまでもありません。

「開催2日前にいきなり電話で言われ…」共産党の申し入れで「水着撮影会」が中止に 騒動の裏側に迫る

 行政処分における比例原則とは、規制対象がもたらすと想定される社会的害悪と、行政機関などが行う規制措置には均衡が保たれていなければならず、過剰な規制措置は許されないという考え方です。

 今回の例に当てはめれば、水着撮影会で被写体の女性がカメラマンに撮影される行為は、仮に過激なポーズがあったとしても合法であり、公序良俗の範囲内とされます。だからこそ、日本中あちこちで撮影会が適法に行われていることになります。

 しかし、このイベントに未成年女性が参加して過激な性的ポーズでの撮影に応じた場合は児童ポルノに該当する場合があり、その際は違法行為になるので社会的害悪にあたります。これは施設を借り切ってようがクローズドだろうがアウトです。

 問題は、このアウト判定の根拠がはっきりしないまま、イベント開始2日前に中止を行政側が決定したことにあります。

 今回の中止については、なぜか他人事な感じで埼玉県知事・大野元裕さんが、そう報告受けてますって感じの釈明をネットでしてました。

 いや、大野さんそもそも大変な事件となった京都アニメーション放火事件で表現の自由を守るふうのコメントをTwitterで流してたのに、どういうことなんだと思うわけですね。

 あなたの仕事は身体を張ってでもアニメ文化も支えるこれらの表現の自由を守ることにあるはずなんですが、事件もアニメも掲げる政策の具に過ぎず、大野さんの主張はパチモンだったんですかね。

京都アニメーションは埼玉県にも大きな宝物を与えてくれた

 ……で、さらに今回問題となった撮影会単独ではなく、近代麻雀水着祭ほか問題のない別の撮影会も利用禁止とすることとなってしまいました。

 これはまず過剰な規制であり、かつ、問題となった撮影会もイベント自体を中止させるのではなく、行政の規制内容と均衡させるために、「そのような未成年女性参加者を被写体にさせてはいけない」とか「未成年女性参加者が被写体となる場合は、児童ポルノに該当するような過度に性的なポーズで撮影を行わせてはならない」という規制をかけるべきだという話になります。

 問題を起こしたから撮影会界隈まるごと出禁にしてよい、とはならないわけです。

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