ジョブ型で若手登用が進むと早期のポストオフが広がってくる(写真:myboys.me/Shutterstock)

年功序列を廃止した「ジョブ型」の人事制度が広がっている。若手の登用や報酬アップにつながると労使ともに歓迎ムードが漂うが、非情な未来はあまり語られていない。優れたマネジメント能力や専門性を持たない、労働者の大部分を占める「ふつうの会社員」にとって、給与のピークは40歳前後になり、管理職になっても大半は40代後半でポストオフされる可能性がある。人生100年時代、定年廃止などが議論されるなか、若いうちからキャリア・人生設計をしっかり立てる必要がある。

(藤井 薫:パーソル総合研究所 上席主任研究員)

「ふつうの会社員」に訪れる非情な未来とは?

 ジョブ型人事制度を導入する企業が増えている。日本能率協会の調査(2023年)では、ジョブ型の人事・評価・処遇制度を何らかの形で導入している企業が2割以上、導入検討中の企業は4割台、合計すると6割を超える。また、労務行政研究所の調査(2024年)によると、管理職層に職務給や役割給を導入している企業が約7割、一般社員層でも約5割に達する。すでに、ジョブ型や職務給は珍しいものではない。

 登用・配置や処遇が、これまでの「ヒト」基準から「仕事」基準に変わると、いわゆる年功序列から実力本位になって、若手人材の抜擢登用が進む。

 2024年8月に政府が公表した「ジョブ型人事指針 」でも、「新人事制度の導入以降、2021年4月から2024年4月にかけて、40歳未満の管理職数は2.6倍に増加した(KDDI)」「ジョブ型人事導入後の約2年間で、従前ではあまり見受けられなかった、30代で課長に昇進する社員も増加している(オリンパス)」などの事例が報告されている。

 また、ジョブ型企業では、そもそも役職定年制度を設けていないという企業もあれば、ジョブ型導入を機に制度廃止に踏み切った企業もある。

 確かに、ジョブ型は若手人材のチャンスを広げるし、役職定年の廃止は、一見、中高齢の管理職にもメリットがある。若手であるか中高齢であるかを問わず、優秀な人材にはメリットが多いジョブ型だが、「ふつうの会社員」にとっては、必ずしもメリットがあるとは言えないかもしれない。

 ジョブ型の導入が「ふつうの会社員」にもたらす処遇上のインパクトは次のようなものだ。

(1)管理職への昇進確率が低くなる
(2)むしろ役職定年制度の廃止でポストオフ年齢が早くなる
(3)管理職に昇進しない人は40歳前後で給与ピークを迎える

 
 以下、順に解説しよう。