外国人を人間ではなく労働力と見ていた日本政府

鳥井:残念ながら「働く」ということを意識できている有識者が少ないのだと思います。それから「なるべくハイスキルな方に日本に来てほしい」などという意見もありますが、これはおかしい。

 午前9時から午後5時の労働だけが、外国人労働者のすべてではありません。仕事が終わった後に、地域で何かしたり、趣味の時間があったり、そういうことも含めて地域社会は支えられている。たとえば、消防団、自治会、リクリエーション活動、サークル活動などがこうしたものに含まれます。

 これまで外国から労働者が来る時に、その方の家族をどうするかというイメージが日本政府にはなかった。非常に稚拙な制度設計にしてしまったのです。そうした反省がずっとないままにここまで続いてきた。労働と人間を分けて、労働力にだけ来てもらおうと考えているのです。

 労働者は人間であり、人間が来れば、そこにどのような生活があるのかということを踏まえた議論が必要です。そういうことをもっとイメージできる人たちが有識者として参加するべきだと思います。

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長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。