「技能実習制度に良かった点など一つもない」

──試験などを経て、特定技能1号から2号へ昇格すると、家族を帯同でき、将来は永住権も申請できるようです。この点に関してはどう評価されますか。

鳥井:しばしばメディアで混同して語られていますが、育成就労と永住権は直接的には関係がありません。

 そもそも、育成就労や特定技能1号は、永住権申請に必要な年数としてカウントされません。カウントされるのは特定技能2号からです。技能実習制度が育成就労になったからといって、日本に永住する外国人が増えるというわけではないと思います。

 ただ、永住権を持てるほうが、外国から来る方々も安心して働くことができる。永住権を持つ方が増えるほうが、社会の安定にはつながると思います。

──技能実習制度が育成就労になり、どこか良くなった部分はありますか?

鳥井:「技能実習制度をやめた」ということが、あえて言うなら改善された部分です。国会でも「技能実習制度の良かったところを活かそう」という方向で議論が進められていますが、「残すべき良かったところ」なんて一つもありません。

 海外から人が来て、何かの仕事に就けば技術が身につく、これが技能実習制度の良いところだと語られがちです。でも、仕事をすれば、どんな仕事であっても技能は身につく。

 これは「技能実習制度の良いところ」ではなくて、「出稼ぎ労働の良いところ」です。それを「技能を与える」という名目で正当化してきたところに、この制度の本質的な問題がある。

「開発途上国への技術移転」という偽装された目的をやめたことは、今回、一歩前進したと言えると思います。「おまえらに技術移転をしてやる」「受け入れてやる」と、開発途上国に対しても非礼な態度を取ってきましたが、実際には「労働者が足りない」という日本社会の事情によって来てもらっていたのです。

レンコン畑で収穫作業に当たる技能実習生(写真:共同通信社)レンコン畑で収穫作業に当たる技能実習生(写真:共同通信社)

──特定技能制度から育成就労制度に切り替えるにあたり、有識者の方々が集まって議論をしたと思いますが、鳥井さんが指摘する問題点がどこまで話し合われたのか疑問を感じますね。