「朝まで生テレビ!」(テレビ朝日)の司会者で有名な田原総一朗氏は、今年4月で90歳になった。今日も現役のジャーナリストとして活躍している。
天皇、ナショナリズム、朝鮮問題、左翼、右翼、部落問題、核兵器、安全保障、メディア規制、日本国憲法、原発、援助交際、新宗教など、あらゆるタブーに切り込み、激しく論争を繰り広げてきた稀代のジャーナリストにタブーはないのか。長いジャーナリスト人生で行き着いたテーマは何なのか。『全身ジャーナリスト』(集英社新書)を上梓した田原総一朗氏、本人に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──昨日は自民党の二階氏、今日は岸田首相、明日は野党の党首と田原さんが与野党の政治家のもとを頻繁に訪れ、直接会って話をしていることが本書からうかがえます。必ずしも取材というわけでもなさそうですが、政治家と会ってどんな話をされているのでしょうか?
田原総一朗氏(以下、田原):海部俊樹さん、宮澤喜一さん、橋本龍太郎さんなどが首相だった頃は、テレビ番組に呼んで真剣勝負で話をした。結果的にはこの3人を失脚させました。
でも、3人を失脚させたのに日本は変わらない。こりゃダメだと思って、それ以降の首相たちには、直接会って「これやめろ」「これ変えろ」と自分の意見を伝えるようにしてきました。日本の総理大臣はみんな素直だからね。中曽根さんも、安倍さんも、言ったらちゃんと実行してくれましたよ。
──海部さん、宮澤さん、橋本さんなどは、田原さんの鋭い質問によって馬脚を現して失脚したのですか?
田原:違う。番組で僕の言ったことに賛成して、実行しようとしたのだけれど、官僚の抵抗に阻まれて約束を守れず失脚した。だからこそ、なんとしても官僚主導を脱却して、政治主導を実現しようとしたのが安倍さんでした。
──安倍政権は内閣人事局を設置しました。
田原:ところが、内閣人事局を作ってどうなったかというと、国家公務員が部長になるには、内閣の了解を得ないと部長になれないから、了解を得るために官邸にごますりをするようになったんだよ。
──内閣人事局の設置は間違いだったと思いますか?
田原:結果的にはね。官僚が官邸に忖度するようになった。物事は何でも行き過ぎると問題が起きるよね。
──田原さんは、本書の中で「日本に二度と戦争を起こさせないこと」「言論の自由を守り抜くこと」「野党をもっと強くして日本の民主主義を強靭にすること」という、ジャーナリストとして守るべき3つの原則と理想について書かれています。
田原:「言論の自由を守る」というのは結構難しい。
「言論の自由を守る」とはすなわち「言いたいことを言う」ということ。相手が現職の総理大臣だって「それはダメだからやめろ」と言わなければならない。総理大臣に喧嘩売るのと一緒だよね。下手すると、こっちが失脚することになる。あるいは、今後一切取材ができなくなる。
この本にも書いたけれど、田中角栄さんが総理の頃に大変なことがあった。