「もう我慢の限界」「これ以上は一緒にいられない」と離婚を考えている人は少なくない。ただ、「離婚をしたら相手と関係が切れて楽になる」「これでお終い」と考えるのは安易かもしれない。結婚をした時と同じように、離婚をする時にも、別れる相手と話し合って決めなければならないことはたくさんある。
『離婚・別居後の共同養育実践マニュアル 別れたふたりで子育てをするためのケーススタディ30』(遠見書房)を上梓した一般社団法人りむすび代表のしばはし聡子氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──この本は「共同養育」について書かれています。共同養育とは何ですか?
しばはし聡子氏(以下、しばはし):共同養育とは、離婚した後も両親が子育てに関わることです。離婚家庭にも様々な形があるので、共同養育のあり方も、別れた夫婦と子どもの関係によって千差万別です。
私たちは、共同養育に取り組む親に向けた支援を行っています。離婚するところまでいった仲の悪い元夫婦が一緒に子育てをするのは並大抵のことではありませんが、夫婦の関係を解消しても、父母双方が両親として一緒に子育てをしていけるようになることを目指して支援しています。
──すでに離婚した人、あるいは、これから離婚しようと考えている人など、どのような方々が相談に来るのでしょうか?
しばはし:同居中、別居中、離婚後、再婚後など、離婚に関わるすべてのフェーズにある方々が相談に来られます。
まだ同居中であれば「離婚を考えているのだけれど、離婚後にどのように子育てすればいいのか」というご相談をいただくことがあります。このような場合は、共同養育のやり方をお伝えします。
すでに離婚の調停裁判を行い、争っているような状況であれば、養育の条件を決めることができても、その後、一緒に子育てに携わっていくことは難しい。このような場合は、なるべく争わずに話し合いをするための個別のカウンセリングを行います。
別居中、あるいは離婚後など、顔を会わせることができない状態であれば、双方の連絡の仲介もしますし、お子さんをお預かりして、一方からもう一方へお連れする親子交流の支援もします。
再婚後に、子どもが実親の一方と会えない悩みを抱えている場合は、実親と関わることの大切さを親に伝えていくこともします。
──離婚する夫婦のうち、どれくらいの割合が共同養育をするのでしょうか?
しばはし:離婚後も離れた親と子どもが交流するケースは、日本の離婚した元夫婦全体のおよそ3割です。裏を返せば、7割の離婚した家庭では、離れて暮らす親と子どもは会っていないということです。
世の中の離婚の多くは裁判所の関わらない協議離婚(※)ですが、離婚後に子どもとどの程度会うかを話し合わないで別れてしまうケースが少なくありません。
別れた夫婦と親子の間に交流がある場合、会う頻度は月に1回かもしれないし、年に1回程度かもしれない。ただ、交流があるところから、さらに共同養育というレベルで関わり合うことができている元夫婦はさらに数が少なくなります。
※離婚には「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3種類がある。協議離婚とは当人同士で決めて手続きを完結する離婚。調停離婚は、調停委員が双方の意見を聴取してまとめ、双方が納得できる解決を目指す離婚。裁判離婚は、双方が証拠のもとに主張しながら、どちらの主張が正しいかを裁判所が判断する離婚。協議離婚が日本の離婚のおよそ90%で、調停離婚はおよそ9%、裁判離婚が1%ほど。
──共同養育において、よく問題になることは何でしょうか?