子どもは「新しいお父さん」をどう感じているのか?

しばはし:どことなく名称は似ていますが、両者は別物です。共同養育は離婚した後も元夫婦がそれぞれ子育てに関わることです。これは、現状の単独親権下でも実施可能な元夫婦間の取り決めで、法的なものではありません。

 これに対して、共同親権とは父母双方が親権を持つことができるという法律です。子どもの財産の管理、身上監護、身の回りの世話などを、父母双方ができる権利を持つという制度。5月の参議院本会議で賛成多数で可決・成立したので、2年後までに施行されます。

──離婚となると、気になるのは養育費の支払いや子どもとの面会です。この本でも、この2つのテーマについてはかなりの紙幅を割いています。

しばはし:現状では、養育費の支払い率は非常に低い。世の中の離婚した元夫婦で、一緒に住んでいない方が養育費を払っているケースは、全体のわずか2割です。

 一方で、意外に思われるかもしれませんが、離婚調停や離婚裁判を経ている人のほうが、むしろ支払い率は高いのです。ただ、こうしたケースは多くの場合、子どもに会わせてもらえないという困難を抱えています。

 そして、子どもとの交流のあるケース(育てていない親が子どもと面会できるケース)は、全体のおよそ3割です。

 共同親権の導入によって、将来的にこの辺りの状況が変わり、別れた元夫婦が、より共同養育ができるようになるかもしれないと期待しています。

──子どもを引き取った親の新しいパートナーが、離婚した夫婦とその子どもの関係に大きく影響を与えるケースについても書かれています。

しばはし:現状の日本では、親が離婚して新しいパートナーと再婚すると、その人が「新しいお父さん」「新しいお母さん」と呼ばれがちです。そうすると「前のお父さん」「前のお母さん」はもはやなき者のように扱われる。あるいは父親・母親の役割が引き継がれたかのような印象を受けます。

──「今日からこの人をお父さんと(あるいはお母さんと)呼んで」のようなやり取りは、昔からテレビドラマの定番シーンですね。

しばはし:そうですね。でも、子どもからしたら大きな迷惑であることが少なくありません。

 もちろんDVがあって離婚する場合など、別れた親と引き離す必要がある場合もあります。しかしそうではなくて、離れて暮らしている親と子の間に関係性があれば、一緒に暮らす親の新しいパートナーがこれから親にならなければならないということは、子どもにとっては受け入れがたいことです。

 新しいパートナーにしても、自分になついてくれないと「親になったのに」という葛藤が生じて虐待につながることがあります。

 また、自分の配偶者が共同養育などを通して別れた相手とやり取りをしていることに、新しいパートナーが歯がゆく感じるということもあります。

 でも、親が別れても、子どもにとって実父や実母の存在は変わりません。その部分が損なわれることなく、親の新しいパートナーが家族の中に加わっていく必要があると思います。

──子どもからすると、親の新しいパートナーから親のように接せられるのは嫌なものですか?