利権と化した監理団体のあるべき姿

鳥井:何もないのが多くのケースの現実です。もともと一定の日本語ができる人が日本に来るという前提のはずですが、実際にはそのような状況ではありません。日本語の勉強は本人負担になっています。

 さらに、教材費などと名目を付けて、むしろ海外から来る方々に借金をさせています。こうした構造に手が入らなかったことに問題があります。育成就労で日本に来る時に、本人に負担のない移動をいかに可能にするのか。あらためて制度設計を検討し直すべきだと思います。

──技能実習制度時代の弊害として、監理団体と呼ばれる、外国人を日本の企業へ仲介する団体のあり方について、鳥井さんは問題提起してきました。

鳥井:技能実習制度が30年間も続いてしまった一つの大きな要因は、ここにあります。外国人の労働力を扱う利権構造を作り出してしまったのです。監理団体を使うことで様々な名目のお金の動きができる。送り出し機関との間で、リベートやバックマージン、接待などがあり、これが奴隷労働構造を構成しているのです。

──地域の企業が集まる協会が管理団体になったり、人材派遣の企業がビジネスとして管理団体をしていたりするようです。金儲けに使われないためには、誰が監理団体をするべきなのでしょう?

鳥井:監理団体の中に、真っ当にやっている団体がないわけではありません。でも、協会や企業ではなく、国が監理団体をするべきです。ハローワークにもっと投資して、この分野に人材を割くべきです。

 送り出し国にも協力を求め、相手国にも公の送り出し機関を作ってもらい、政府間で連携しながら、求人と応募を行えるようにすればいい。こうした分野に国が予算を割いていく必要があります。

 このような大事なことを民間に任せてきたのは、これから外国人を受け入れていくという構想の大きさが分かっていないからです。

 労使対等の原則によって、奴隷労働を根絶することが民主主義の約束です。ところが、そのことを忘れてしまったかのような議論が行われている。

 労働者の転籍を自由にすると、「労働者が賃金のいい仕事や大きな都市にみんな流れてしまう」という地方の経営者の声があります。実際にそれを裏付けるデータがちゃんと集められたことはありませんが、仮にそうだとしても、ではなぜそうなってしまうのか。問題の本質を考えるべきです。

「うちの地域にはこんな魅力がある」「この仕事にはこんな魅力がある」ということをどうやって外国人の方々に売り込んでいくのか。そのようなアピールを各事業者が自分たちでなかなかできないのであれば、国がサポートすべきです。これは地方自治体だけが考えればいいということではなく、中央政府も考えるべきことです。

 牧山ひろえ参議院議員が、育成就労をめぐる国会の質疑で岸田首相に「日本のストロングポイントはどこですか?」と質問していましたが、それを考えることが重要です。日本という国を考えた場合、何が一番良いことかと考えると、日本が安全で平和だということです。日本や、各地域の良いところをそれぞれが考えて、もっと強調していくべきです。