衆院本会議場の名札が倒れたままの河合克行衆院議員(当時)の議席(写真:共同通信社) 衆院本会議場の名札が倒れたままの河井克行衆院議員(当時)の議席(写真:共同通信社)

 2019年の参院選で、地方政治家ら100人に対して、総額2870万円を提供したとして、公職選挙法違反で懲役3年追徴金130万円の実刑判決を受けた河井克行元法務大臣。昨年11月末に栃木県の刑務所から仮釈放された河井氏は、一連の出来事を経て今何を思うのか。『獄中日記 塀の中に落ちた法務大臣の1160日』(飛鳥新社)を上梓した河井克行氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──なぜ、刑務所での体験や想いについて本を書かれたのでしょうか?

河井克行氏(以下、河井):2020年に逮捕されて、翌年に東京地裁で刑が確定しました。一度は東京高裁に控訴したのですが、その後控訴を取り下げて、栃木県さくら市喜連川にある「喜連川社会復帰促進センター」という刑務所に移送されました。

 移送されるまでは、葛飾区小菅にある「東京拘置所」にいたのですが、この間は妻(河井案里)が日参してくれました。

 この東京拘置所にいた時に、妻が「月刊Hanada」の花田紀凱編集長を連れて面会に来たことがありました。その時に、連載のご提案をいただいたのです。

 実は、私は以前から花田さんと知り合いでした。というのも、私が総理大臣補佐官の時に安倍晋三元総理大臣から花田さんを紹介いただき、それ以来、私は裏話なども含めながら、国際情勢や外交について「月刊Hanada」に書いていたからです。

 逮捕されて、実刑判決をくらった法務大臣は私以外にいませんから、歴代の先輩方には顔に泥を塗るようなことをして、大変申し訳ないと思っています。ただ、同時に刑務所の中を体験してみないと分からないこともあります。ある意味では貴重な経験なので、自分の中だけに留めておくのはもったいない。

 東京拘置所に収容される中で、次の世代の人たちに自分の経験を伝えたい、と猛烈に考えるようになりました。若い人たちがより良き人生を送る参考にしてほしいというという想いが募っていたんです。

 そこで、自分が日々刑務所の中で体験することや、刑務所という制約のある環境でも届いてくる巷のニュースに対して私が感じることなどを世の中に発信したいという話をしたところ、花田編集長から「河井さん、うちの雑誌で書いてよ」とご提案をいただき、獄中からの連載が始まりました。

「あなたは塀の中に入っても、引き続き社会のために役立てることをやってほしい」と妻から面会の時に言われたことも大きな理由でした。

──刑務所の中で原稿を書くというのは、いろいろ不都合もあるのではないですか?