(廣末登・ノンフィクション作家)
前回の記事では、半グレから紆余曲折しつつ更生した若者の話を紹介した。この更生は、本人の努力もさることながら、彼を支えた保護司、居場所を与え一日の大半を一緒に過ごし、支え続けた協力雇用主の存在が欠かせない。
今回は、若者を雇用し、昼夜を分かたず指導を行った協力雇用主の側から、更生保護のリアルをご紹介する。
(前回記事)少年刑務所を出た「元半グレ」はなぜ恩人の雇い主を裏切ったか
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65148
協力雇用主とは
わが国の更生保護においては、この協力雇用主の存在が、再犯の防止という点において大きな役割を果たしている。協力雇用主とは「犯罪や非行経験者を、その前科・前歴という負の事情を理解した上で雇用し、彼らに対して就労継続に必要な技能や、生活習慣を習得させるための指導や助言を行う」雇用主のことである。
法務省は、協力雇用主の充実に力を入れている。その理由は、保護観察終了者のうち、有職者と無職者を比較した際、「再犯率」が大きく異なることが分かったからである。平成24年から28年の更生保護年報のデータをみると、再犯率は有職者7.9%に対して無職者25.9%と、3倍強の違いが見られた。さらに、刑務所の再入所者の71.8%が、再犯時に無職であったことが明らかになった。
これは、平成30年度、31年度と、福岡県更生保護就労支援事業所長として、就労支援に携わった筆者の経験からも得心できる現象である。