大内裕和教授は教育問題や貧困問題で鋭い言説を発表してきた人物なのだが

「大内教授に奨学金の原稿を丸ごとパクられた・・・」

「学生ローン」とも揶揄される奨学金制度の問題を長年取材しているフリージャーナリスト・三宅勝久氏が、自著を大量に盗用された疑いがあることに気づいたのは昨年夏のことだった。

 冒頭の「大内教授」とは、愛知県名古屋市にある中京大学国際教養学部の大内裕和(おおうち・ひろかず)教授(専門は教育学・教育社会学)のことだ。

 大内教授は奨学金の返済に苦しむ若者たちや学生の貧困などを研究テーマにしており、格差社会を特集するメディアでたびたび取り上げられている。最近ではコロナ禍で発生した持続化給付金詐欺事件の背景についても報道番組などでコメントしており、学生らを食い物にする「ブラックバイト」(違法性のあるアルバイト)の問題を指摘し続けるなど有名教授だ。

 そんな“大物教授”が、盗用などするだろうか・・・。それが、三宅氏の話を最初に耳にしたときの筆者の素朴な疑問だった。

 そもそも、原稿の盗用はバレたときのリスクが大きすぎる。研究者なら、一発で学者生命が絶たれてしまう危険がある。そのことはこれまでに発覚した研究論文の盗用・剽窃事件が物語っている。当然、教育学者である大内教授も事の重大さを理解しているはずだ。

 ところが、三宅氏が調べてみると、大内教授の著作の中に「盗用」あるいは「剽窃」としか表現のしようがない記述が次々と出てきたのだという。それはまさに「コピペの嵐」のようだった——。

次々に「完全一致」の文章が

 盗用疑惑が発覚した経緯を、三宅氏が振り返る。

「昨年7月、奨学金問題の取材の延長で、大内氏が2017年に出した著書『奨学金が日本を滅ぼす』(朝日新聞出版)に目を通していたんです。読んでいる途中で、どうもこれは私がどこかで書いたものと似ているんじゃないか、と気になる記述にぶつかりました。そこで、本棚から私が2013年に寄稿した書籍『日本の奨学金はこれでいいのか!』(共著、あけび書房)を引っ張り出して確認してみました。やはりそこからの丸写しのような記述でした。同様の箇所はいくつもあり、非常に驚きました」