誰にでも、他人には知られたくない秘密が一つや二つはあるだろう。東京在住の40代の男性A氏も、職場で周囲に見せるものとは別の顔を持っている。彼は本業とは別にマルチ商法の“ベテラン勧誘員”として、このコロナ禍でも旺盛に活動しているのだ。
合法だがトラブルも少なくないマルチ商法
マルチ商法とは商品などの販売契約をして会員になり、次は自分が買い手(会員)を探し、買い手(会員)が増えるごとにマージンが入る仕組みだ。この手法を繰り返して、ねずみ算式に会員を増やしていく仕組みになっている。
なお、マルチ商法は、特定商取引法により厳しい規制があるものの合法である。特定商取引法第33条で定められた「連鎖販売取引」がマルチ商法なのだ。違法なのは、人口が有限である以上、必ずどの時点下で破綻し、加入者が多額の損失を被ることになっている「無限連鎖講」である。
ただ、マルチ商法のほうも、合法とはいえ、多くの人が胡散臭さを感じていることだろう。それは、過去にその手法を謳った企業や団体が会員から多額の資金を集めて破綻したり、返金に応じなかったりするトラブルが多発しているからだ。
マルチ商法に関係する事件で言えば、最近ではUSBメモリーの販売預託商法を展開するVISIONが実際の運用収益はほとんどなく、自転車操業状態であるにもかかわらず、実態を隠して勧誘していたケースがある。結果、特定商取引法違反として、消費者庁が今年3月23日に業務停止命令(2年)を下している。
また、磁気健康器具の預託販売で会員から約2100億円を集めて、2018年に経営破綻したジャパンライフもそうした例の一つだ。この4月13日には、東京地裁で出資法違反の罪に問われていた同社幹部2人に対して、執行猶予付きの有罪が下された。