「モノなしマルチのツールには投資話や教材などがありますが、最近の代表格は仮想通貨。ビットコインの急騰で一般人も億万長者になったとの報道があり、“それなら自分も”と一攫千金を目論む人が少なくありません」(先の弁護士)
「人間関係を現金化するのがマルチ商法。騙される方が悪い」
A氏が、自身の「ビジネス」のコツを教えてくれた。
「まず、同業者や仲間が新たなマルチ商法の企業や団体を立ち上げるとの情報を事前に入手できればベストです。マルチ商法ではより上流に位置することが有利になりますから。ここで気を付けなければならないポイントは、決して自分がトップにはならないこと。トップに就任すると、社会的問題になった時に法的な責任を問われますからね」
このA氏、仮想通貨を扱うマルチ商法にも精通していた。仮に仮想通貨を扱うその団体を「B」としよう。むろん、仮想通貨は実在しない。
「BのHPを立ち上げるのと同時に、自分も複数の仮名で、複数のブログやインスタを立ち上げます。その時の肩書きは、『個人投資家』などが多い。ブログでは、自分がビットコインで大儲けした体験談の他に、実在するがメジャーではない仮想通貨を紹介します」(同)
その中に、Bが扱う“実在しない”仮想通貨を紛れ込ませるのだという。
A氏の独白が続く。
「その後、別のブログなどでBの仮想通貨を取り上げます。そこでは『会員になり、友人や知人を紹介する毎に、仮想通貨が付加される』と書くのがポイント。これでマルチ商法のシステムが完成です」
しかし、これではネットワーク構築にずいぶん時間がかかりそうだが・・・。
「そうでもありません。例えば短期間で多くの会員を獲得するため、宗教団体の信者が集まる掲示板などに信者を装って潜り込みます。多くの信者は毎月の“お布施”の工面に苦労しているので、儲け話を持ちかければすんなり飛びつく。過去のマルチ商法事件でも、巨大宗教団体の信者に被害者が多かったですね」
実は、彼の本業は「地方公務員」なのだ。罪悪感はないのかと聞いてみた。
「罪悪感は全くありません。世の中には、努力もせずにひと儲けしようとする欲の皮が突っ張った人が多すぎる。彼らの人間関係をすべて現金化するのがマルチ商法。騙される方が悪いのです」
公僕の仮面を被って働くA氏は、今日もネット上でカモを探し続けているのだ。