A氏が続ける。
「ここ数年、我々の会員獲得の手段はFacebookやTwitterなどが主流で、活動の中心は会員制のネットサロンです。流行の音声SNS『Clubhouse(クラブハウス)』も、頻繁に利用しています」
Clubhouseは招待制で、登録には電話番号などの入力が必要だ。トラブルが起きた時には“身元”が明らかになる。彼らの「ビジネス」には不向きではないのか。
「確かに、Clubhouseは招待制ですが、同業者や仲間が何人もいますから入り込むのは簡単でした。仮名で申請してもチェックされることはありません。格安パソコンや携帯電話を使っているので、何かあったら破棄してしまえばいいだけです」(A氏)
つまり、彼はネットを駆使して本名を明かさないばかりか、一度も相手に会わずに会員を勧誘しているという。
最近流行の商品は「仮想通貨」
とはいえ、マルチ商法には商品がつきもの。会員間で商品が介在しないと、“ねずみ講”と認定されて販売預託商法に抵触する恐れがある。
その点をマルチ商法に詳しい弁護士に訊ねてみた。
「会員間で、モノが介在しなくても違法とは必ずしも言えません。確か二会員間で現金だけが介在する『ねずみ講』は販売預託商法で禁じられています。ですが、マルチ商法で出資や特定の権利などを勧誘ツールにすれば、必ずしも販売預託商法には触れるとは言えなくなるのです」
そのためここ数年、国民生活センターには「モノなし」マルチ商法の相談件数が急増しているという。2018年度の相談件数は10526件で、そのうち「モノなしマルチ商法」の相談は半数以上の5490件に上っている。