(写真:Ahmet Misirligul/Shutterstock)
拡大画像表示

婦人科系の希少がんに新たな治療の道

〈がん〉という病は死に直結するという恐ろしいイメージをまといつつも、2人に1人が罹患するとあってありふれた病でもある。その中には「まさか、そんな場所に悪性腫瘍が!?」というような稀ながんがあり、人口10万人あたり6例未満のものを〈希少がん〉と称している。罹患数一位の大腸がんが人口10万人あたり117.1例(2020年)なので、そのレアさがおわかりいただけるだろうか。その上、希少がんには200種類近くあり、そのレアさ故に治療法が確立されていないものが多い。

 北海道大学病院は、婦人科系の希少がんである「外陰がん」と「腟がん」、さらに「子宮頸がん」の局所進行・再発に対し、“第5のがん治療法”といわれるアルミノックス治療(光免疫療法)を用いる治験を2024年10月より開始した。年間の罹患者数は、外陰がん250人、腟がん150人、子宮頸がん1万人程度とされている*1

 ちなみに、がんの「3大治療法」とは、長らく手術療法、放射線療法、薬物療法とされてきた。そこに近年、第4の治療法として免疫療法が登場した。アルミノックス治療は、この4つに次ぐ、第5の治療法というわけだ。

 現在、「再発頭頸部がん」に対して保険適用されているアルミノックス治療は、薬剤とレーザ光を使ってがん細胞だけを狙い撃ちするため、正常な細胞に影響を与えにくく副作用が少ないとされている。

 その仕組みは、がん細胞の表面には細胞の増殖に関わるタンパク質のEGFR(上皮成長因子受容体)が多く見られる。このEGFRに結合する抗体(IgG1)のセツキシマブと光感受性物質を結合させた薬剤アキャルックスを患者に点滴で投与すると、がん細胞にだけ薬剤が集まってくる。そこにレーザ光を照射すると薬剤中の光感受性物質が光化学反応を起こして細胞膜を破壊するのだ。皮膚表面より10mm以上深い場所にがんがある場合は、ニードルカテーテルを使って腫瘍の内部に光ファイバーを挿入してレーザ光を照射する*2

 これを北海道大学病院は、女性のたいへんデリケートな場所にできるがんに対して適応拡大を目指すための治験データを集めている。新たな治療法はどんな可能性を持っているのか。治験を率いる北海道大学産婦人科の渡利英道教授に聞いた。

 なお、各がんについてはウェブサイト「がん情報サービス」も参照していただきたい。

*1 日本産科婦人科学会 婦人科腫瘍委員会 2018年-2020年患者年報より

*2 アルミノックス治療(光免疫療法)が受けられるのは、切除不能な局所進行/再発の頭頸部がんのみ。実施できるのは施設・医師要件を満たした医療機関で、クリニックや医院など診療所では行われない。実施可能な施設は楽天メディカルのサイトから確認できる。